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Louis Vierne : Pièces de Fantaisie ( extraits )
( Accord : 204842 )
from Deuxième suite op. 53
- Hymne au soleil
- Feux follets
- Clair de lune
- Toccata
from Première suite op. 51
- Andantino
- Caprice
- Intermezzo
- Marche nuptiale
from Quatrière suite op. 55
- Cathédrales
- Naïades
- Les Cloches de Hinckley
from Troisième suite op. 54
- Impromptu
- Etoile du soir
- Carrilon de Westminster
Susan Landale ( org : St. Ouen, Rouen )
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昨年末、ヴィエルヌ交響曲第 1 番の推薦盤選定「百選編集会議」 (註1) のあと、「では、『幻想小曲集』なら誰の録音がオススメか」という質問が続いた。この曲集についても、実のところ、誰の演奏がベストと断言できるほど全曲録音盤を吟味してきたわけではないので、聴いた中でリテーズ、べーカー、ラトリとランデイルだけ短評させていただいた (註2)。
このうちスーザン・ランデイル盤は全曲ではなく抄録であるが、「ちょっと真面目にかたぶきすぎ」とし、結論としては、消去法的に「ラトリが無難」という答えになった (註3) 。その後、スミスの名著 (註4) を繙きながら、サン=トゥアンの楽器とヴィエルヌの音楽との相関について考えているうちに、ランデイル盤を聴き直そうという気になった。改めて知識が増えると、何度聴き直しても違う楽しみ方が簡単にできるのも、オルガン録音聴きの妙味のひとつである。
まず、この録音はカヴァイユ=コルの最も魅惑的な楽器のひとつ、ルーアンのサン=トゥアンの楽器音と響きの豊かさ、またディヴィジョンの遠近が明快に捉えられている。
ヴィエルヌのサンフォニーの録音には、トゥールーズのサン=セルナンが多く使われる一方、『幻想小曲集』の録音にはなぜサン=トゥアンが選ばれることが多いのか、ランデイルの録音にひとつの鍵がありそうだ。高い空間を持つ会堂の豊かな残響だけではなく、この楽器の、特に Récit expressif の音色の多彩さこそ、この曲集に必要な「多様な表現」と自然なデュナーミクを可能にするからではないかと思われるのである。 (註5)
マイク・ポイントは、ペダル音が少々背後に聞こえ、ややポジティフに近めの気もするが、ランデイルの演奏を聴いていると、音の要素が暈(ぼ)けずに分解能よく聞こえる。特にレシ・エクスプレッシフ(スウェルを持つレシ)を弾く際の、ストップの多様な美しさとデュナーミクの繊細さが魅力的に捉えられた録音ではないだろうか (註6) 。この録音を聴いていると、使用楽器の是非はともかく、例えば、パリ・ノートルダムでのラトリ盤は、色調と強弱のコントラストが淡い気がしてくる。
もうひとつは、ランデイルの堅実な演奏ぶりについてである。
慥かに「ちょっと真面目にかたぶきすぎ」な印象は否めず、「Toccata」など楽々と弾きこなすラトリに比べ、技術的にかなり苦しい部分も散見される。しかし、彼女の演奏を、耳を凝らして聴いていると、レジストレーションとアーチキュレーションとの関係が大変わかりやすい(聴き取りやすい)。ランデイルの演奏は、曖昧な印象画に流されがちなヴィエルヌのイメージを、細部に至るまで明晰に捉えた演奏なのであり、その意味では、ロジックを以て組み上げられるべき音楽内容が、サンフォニーだけではなく、この曲集にもきちんと積まれているのである。これは改めての発見だった!
「Hymne au soleil」や「Caprice」など、水平的には動的なパッセージと静的な和声の対比、垂直的にはストップの重畳と音量的な対比が明快な作品では、楽器音の素晴らしさともに、輪郭のくっきり明快な演奏だけに、音楽自体の分節、音の要素の分解能に卓れた面白さを持つのだ。録音方法もその意味では軌を一にしているわけで、こういうのもまた、『幻想小曲集』に対する確かなアプローチのひとつといえそうだ。とはいえ、サンフォニーではスケルツォ程度にとどまっているヴィエルヌの「遊び」的な要素、つまり戯れては止まり、止まっては戯れるパッセージの跛行性や音響的な諧謔などに於いては、ランデイルでは聊かその妙を損なっているのは否めないが (註7) 、瑕疵と言うには至らず、むしろ微笑ましい。
しかし、ランデイルを、特にラトリに対比させて聴き比べながら思ったのは、ヴィエルヌの作品は「演奏者による即興性」がたっぷり入り込むべきなのだろうか? という問いである。昨年末からあれこれ聴きながら胚胎してきた私的な思いとしては、ヴィエルヌもまた、マニエリスムに徹底拘泥する方が実は面白いのではなかろうか? ということだ。
ヴィエルヌについては、引き続き不定期にではあるが、楽器との相関−特にデュナーミクの表現法−と相即して、この場で考えてゆければと思う。
■ 註 ■
(註1) 議事録?をアレンジした当議論については、ヴィエルヌの交響曲の方途 (2002.12) に纏めた。『幻想小曲集』のリコメンデーションが続いて問われた背景は、回答末尾に「ヴィエルヌの良さを味わうには、むしろ、多様な表現の中に彼の個性が生きている『幻想小曲集』を聴いてみられてはいかがでしょうか」と回答したためである。
(註2) 前回同様、ヴィエルヌのサイト http://www.netreach.net/‾druid/LVe/Enregistr_1.html 及び http://www.california.com/‾eameece/viernediscography.htm で『幻想小曲集』の音盤情報を見ると、オムニバスで 1 曲或いは数曲を取り上げている音盤は当然のことながら多数あるものの、全曲集(抜萃盤を含む)となると、これまた意外に少ないリリース状況なのである。完璧ではないが、以下は上記サイト情報リバイズをを含む、私がわかっている範囲での全曲ないし抜萃録音である。ここでひとつ注意しておきたいのは、9 盤のうち、ヴィエルヌゆかりのパリ・ノートルダム大聖堂での録音はラトリ盤だけで、実に 4 盤もがルーアンのサン=トゥアンによる録音ということである。この中では、私的にはやはりラブリック盤がダントツに興味津々の録音である。
- François Lombard : Bad-Sáckingen Münster (Mitra, 1997)
- Ben van Oosten : St-Ouen, Rouen (MD+G, 1998)
- George C. Baker : St-Ouen, Rouen (Solstice, 1994)
- Günther Kaunzinger : Waldsassen basilique (Novalis, 1997)
- Susan Landale : St-Ouen, Rouen (Adda-Accord, 1990)
- Olivier Latry : Notre-Dame de Paris (BNL, 1988)
- William Rübsam : St-François-de-Sales, Lyon (Beyer, 1983)
- Gaston Litaize : St-François-Xavier, Paris (EMI-VSM, 1972 ; 2LP)
- Pierre Labric : St-Ouen, Rouen (Grand Orgue, 1972 ; 3LP)
(註3) 栄誉ある(?)リコメンデーションとなったオリヴィエ・ラトリ盤は以下のとおり。

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Louis Vierne : Pièces de Fantaisie
( BNL : 112742 ; 2CDs )
Première suite op. 51
- Prèlude
- Andantino
- Caprice
- Intermezzo
- Requiem aeternam
- Marche nuptiale
Quatrière suite op. 55
- Aubade
- Résignation
- Cathédrales
- Naïades
- Gargouilles et chimères
- Les Cloches de Hinckley
Deuxième suite op. 53
- Lamento
- Sicilienne
- Hymne au soleil
- Feux follets
- Clair de lune
- Toccata
Troisième suite op. 54
- Dédicance
- Impromptu
- Etoile du soir
- Fantômes
- Sur le Rhin
- Carrilon de Westminster
Olivier Latry ( org : Notre-Dame, Paris )
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(註4) Rollin Smith 「Louis Vierne, Organist of Notre Dame Cathedral (The Complete Organ Series Vol 3)」 (Pendragon Press, 1998) ヴィエルヌに関心のある方は、同書は、必ず座右に置くべき名コンパニオンであると私は思う。
(註5) ランデイル自身が書いている当盤ライナーの中に、サン=トゥアンに関する次のような記述がある。
Here [=St- Ouen], practically all his [=Vierne's] registration can be carried out to the letter, and the exceptionally rich Récit compensates for the lack of swell shutters for the Positif; something which Vierne calls for on sevaral occasions but which did not (and does not) exist at Notre-Dame.
窮めて単純な比較をしておくと、Récit expressif のストップ数(あくまで現在の仕様同士)は、パリ・ノートルダムが 16、サン=セルナンが 14、サン=トゥアンが 20 となっている。
(註6) オルガン演奏法に関しては、まだまだ勉強不足のため、Positif と Récit expressif とのデュナーミク操作の関係がよく理解できず、大林師匠に詳しくご解説いただいた。多謝。
■ カヴァイユ=コルの標準的な鍵盤構成
III. 第 3 鍵盤 Récit expressif (必ずexpressif)
II. 第 2 鍵盤 Positif
I. 第 1 鍵盤 Grand Orgue
Ped. Pedale
[要旨] このオルガンで 3 つのマニュアル・カプラー (III+II, II+I, III+I) を入れておくと、Récit のシャッターを閉じた状態で弾けば最弱音が得られ、ストップを加えシャッターを空ければ mf 程度、そのまま Positif に移って弾けば f 程度、そして G-O に移れば ff になる。こうして瞬間的に pp から ff まで変化できる。これと、ventil とを組み合わせれば、さらにきめ細かく音色/デュナーミクを可変できる。スムーズなデュナーミクの範囲を拡大するためには、より多くのストップをスウェル箱内に入れなければいけない。そのため後代には、Récit についで Positif をもスウェルに収容するようになった、と考えることができる。しかし、同じ目的を達するために、Récit のストップそのものを増やすこともできるわけで、St-Ouen ではそう見なせるだろう。
(註7) 『幻想小曲集』でのガストン・リテーズは、比較的速めのテンポであっさり弾いているが、こういう側面はさすがと思わせるところがやはりある。それだけにヴィエルヌの作品は、情緒的な表現力よりもロジックの錯綜の方が面白い作曲家のように思えてならない。リテーズ盤は、録音や会堂の所為もあるのか、音響的な愉悦があまり堪能できないのが残念。以下は、所有盤(仏 Pathé Marconi-EMI)。

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Louis Vierne : Pièces de Fantaisie
( Pathé Marconi-EMI : C 165-12117/8 ; 2LPs )
Première suite op. 51
- Prèlude
- Andantino
- Caprice
- Intermezzo
- Requiem aeternam
- Marche nuptiale
Deuxième suite op. 53
- Lamento
- Sicilienne
- Hymne au soleil
- Feux follets
- Clair de lune
- Toccata
Troisième suite op. 54
- Dédicance
Quatrière suite op. 55
- Naïades
Troisième suite op. 54
- Impromptu
- Etoile du soir
- Fantômes
- Sur le Rhin
Quatrière suite op. 55
- Cathédrales
Troisième suite op. 54
- Carrilon de Westminster
Quatrière suite op. 55
- Aubade
- Résignation
- Gargouilles et chimères
- Les Cloches de Hinckley
Gaston Litaize ( org : St-François-Xavier, Paris )
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■ 関係作曲者 ■
ルイ・ヴィエルヌ (1870 - 1937)
■ 関係風琴 ■
St- Ouen はカヴァイエ=コルの晩年の作品。同じく、ヴィエルヌの交響曲の方途 (2002.12) の同項目に纏めてあるので、参照されたい。
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