「フランスオルガン音楽史探訪」註解 −或いはさらなる歪読曲解のために−






音盤編の前口上


レコード芸術』 2003年 9・10 月号「フランスオルガン音楽史探訪」における 57 枚の風琴音盤とそのコメントを再掲した。
音盤編については、後日、作曲家情報も拡充の上、別の形でまとめたいと思っているので、今回はコメントはなるべく掲載時ままに据え置くとし、ここでは訂正等の注釈を主に最小限にとどめた。
また、今回はフランスの作曲家ベースでの音盤紹介であり、「百選」入りしていない作曲家も多かったので、「百選」を軸にしながらも、そこから多少自由にピックアップしている。読者にも「百選」サイトを実際に訪問していただけるだろう期待もあり、誌上では特定演奏者の偏頗を避けるため、「百選」でチョイスしながら敢えてここに挙げなかった録音もあるが、その場合は是非「百選」音盤を優先的に聴いていただきたいと思う。
さて、今振り返ってみると、まだまだ勉強不足を痛感した次第。とりわけデュプレ、メシアン、ラングレなどでは、典礼性との連関という狭い範囲からの「個人的趣向」の域から脱していない。とはいえ、私にとっては、まとまって音楽史を遡及する勉強の機会と発言の場を与えていただいたわけで、連載の場を提供いただいた音楽之友社・田中氏には深く感謝を申し述べたい。向後、さらに勉強していくための踏み石とする心算である。
蛇足ながら、注釈からもと本文に戻る場合は、ブラウザの「戻る(←)」を使用されたし。
霜月・月齢 弐拾参点参
浮月主人 鞠躬



音盤編 [全 57 枚]  9 月号掲載分 10 月号掲載分





9 月号掲載分



ERATO : ERX-7129〜42


『バロック・オルガン大全集』第 4 巻 フランス :ヴェルサイユ楽派篇
アラン、イゾアール、テラッス、ヴィヤール、ジロ (org)
<録音: 1960〜70 年代>
[ ERATO : ERX-7129〜42 ; 14 LPs ] (国内盤 LP)

※フランスの古典オルガン音楽史を通観する上で、欠かせなかったセット。CD 再発の際、アランの幾つかは新録音に替えられたが、グリニやクープラン (註1) など古い録音の方がよいので LP を。テラッスのボワヴァンなども貴重。


VOX : SVBX 5310


『世界のオルガン音楽概要』 フランス第 1 巻 先駆者たち
イゾアール、ダラッス、テラッス (org)
<録音: 1960 年代、詳細不詳>
[ VOX : SVBX 5310 ; 3 LPs ] (海外盤 LP)

※オルガン音楽史を大概する上で、これも重要なセット (註2)  だった。廉価盤での CD 再発を鶴首。この巻はフランス古典の先駆者をまとめたもの。出色は、イゾアールのデュ・コロワの小品。これだけでも聴く価値はある。

Harmonia Mundi : HMO 30.570


ジャン・ティトゥルーズ(1562/63?〜1633) :オルガン作品集
ミシェル・シャピュイ (org)、カイヤ/ヴォカール・アンサンブル
<録音: 1964 年?> (註3)  
[ Harmonia Mundi : HMO 30.570 ] (海外盤 LP)

※16 世紀様式の楽器が仏国にはないので、ティトゥルーズ演奏上、仏国楽器では音響的に無理があるとか? しかし、古い録音だがこのシャピュイ盤がベスト。和声が美しく滋味深く、明朗で生き生きした音楽を聴かせる。

百選盤

ADDA : 581305


ジャン・ティトゥルーズ(1562/63?〜1633) :オルガン作品集
シルヴェン・シャラボロ (org)、プラン・シャン・アルターネ (註4)  
<録音: 1992 年 4 月>
[ ADDA : 581305 ] (海外盤 CD)

※シャラボロはシャピュイ門下。師匠のごとく生命力溢れる音楽を聴かせる人だ。彼のティトゥルーズも古典的なフレームをおさえながら、闊達なアーチキュレーションと清澄な響きにより、清々しい音楽を聴かせてくれる。
Harmonic Records : H/CD 9037


ジャン・ティトゥルーズ(1562/63?〜1633) :オルガン作品集
ジャン=シャルル・アブリツェル (org)、ヴェルセ・シャンテ・アルターネ
<録音: 1990年11月>
[ Harmonic Records : H/CD 9037 ] (海外盤 CD)

※奇才ヴィダル (註5)  の門下でベルフォールの人、アブリツェルによるティトゥルーズ。古色蒼然とした大変地味な演奏だが、ティトゥルーズの原初形態とはこういうものかも。アブリツェル自身は窮めて質実な演奏スタイル。
assai : 222142


ジャン・ティトゥルーズ(1562/63?〜1633)&ユスタシュ・デュ・コロワ(1549〜1609)
セルジュ・ショーンブロット (org)、カルミナ・サクラ
<録音: 2001 年 1 月>
[ assai : 222142 ] (海外盤 CD)

※一番新しいティトゥルーズの録音。プランシャンにコロワを持ってきた、絶妙のコラボ感覚。ショーンブロットは若手ながら既に録音数も多いが、解釈は割に自由なクチで、イゾアールを彷彿させるところがある。
Harmonia Mundi : HMO 530


フランソワ・ロベルデ(1624〜1680) :フーガとキャプリス
ミシェル・シャピュイ (org)
<録音: 1960 年代初期?>
[ Harmonia Mundi : HMO 530 ] (海外盤 LP)

※シャピュイのロベルデ録音には新旧あり、この旧録音は多分世界初だろう。だが、全曲ではない。イル・シュル・ソルグとマノスクの 2 つの楽器を用い、各々同じ曲も弾いている。特に前者の響きが気品に溢れ、時を忘れる。

百選盤

Astrée : E 7768


フランソワ・ロベルデ(1624〜1680) :フーガとキャプリス
ミシェル・シャピュイ (org)
<録音: 1977 年 3 月>
[ Astrée : E 7768 ] (海外盤 CD)

※新録音は全曲盤。ロックモールの楽器による。イタリア様式に沿ったロベルデの素朴で力強く、簡素ながら高潔な音楽にはシャピュイが最適。心地よい和声や剛毅なフーガなどに音の綾の愉悦を堪能できよう。

百選盤

Archiv : 198361


ルイ・クープラン(ca.1626〜1661) :オルガン作品集(初録音)
ミシェル・シャピュイ (org)
<録音: 1965 年 4 月>
[ Archiv : 198361 ] (海外盤 LP)

※クープランは是非ルイを。骨太で美しく質朴な作品だ。ルイの録音はまだ少なく、シャピュイ盤を凌駕するものはまだない。この演奏で、光輪のように煌めく色彩と神々しさを放つルイの音楽に魅惑されることだろう。

百選盤

Virgin/Veritas : 5 61775 2


ルイ・クープラン(ca.1626〜1661) :オルガン作品集
ヤン・ヴィレム・ヤンセン (org)
<録音: 1993 年>
[ Virgin / Veritas : 5 61775 2 ] (海外盤 CD)

※まとまった録音にはモロニーの全集盤もあるが、シャピュイとともにヤンセン盤を推す。やや堅いが、可憐に美しく響く和声、また澄みとおった響きから立体感が溢出し、ルイの持つ高貴さが自然に香ってくる。
Arion : ARN 336034


ニコラ・ルベーグ(1624〜1680) :オルガン曲集第 1 巻
ジャン=パトリス・ブロス (org)
<録音: 1981 年 7 月>
[ Arion : ARN 336034 ; 3LPs ] (海外盤 LP)

※ルベーグもまとまった作品録音が非常に少ないが、フランス古典風琴では重要な作曲家である。当盤はその意味でも貴重な 1 組。ブロス初期の録音で、少々直線的ながら爽快な感覚に溢れた魅力ある録音である。
Champeux : CSM 0016


ジル・ジュリアン(1650/55?〜1703) :オルガン曲集
ジャン=ポール・ジポン (org)
<録音: 1999 年 5 月>
[ Champeux : CSM 0016 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※ジュリアンはルベーグの後の世代で、17 世紀後半のシャルトルの人。書法的な完成度の高い作品はほとんどないが、気品ある情緒と時代を先取りした和声が魅力。ジポンの演奏もその魅力をよく伝えている。
BNL : 112812〜13


ニコラ・ド・グリニ(1672〜1703) :オルガン作品集(ミサ&賛歌)
ベルナール・クデュリエ (org)、アンサンブル・アルテルナティム
<録音: 1991 年 5 月>
[ BNL : 112812, 13 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※グリニはまかり間違うと、ロマン派的な大袈裟な響きに化してしまいがちだが、楽器選択や様式感の点で、素朴で清澄な響きを丁寧に練りあげたクデュリエ盤が出色。味わい深い演奏だ。サントゥガベルの楽器もよい。

百選盤

Stil : 2604 SAN 79


ニコラ・ド・グリニ(1672〜1703) :オルガン作品集(ミサ&賛歌)
ジャン・ボワイエ (org)
<録音: 1979 年>
[ Stil : 2604 SAN 79 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※若きボワイエの録音。今にすれば大きな特長もないが、ボワイエの演奏にストレートな息吹きを感じる。修辞的要素の濃いミサよりも、賛歌の方が素直に楽しめる。当時ボワイエを抜擢した Stil の目利きには感心。
Valois : MB 925〜927


ニコラ・ド・グリニ(1672〜1703) :オルガン作品集(ミサ&賛歌)
メルヴィル・スミス (org)
<録音: 1960 年 8 月>
[ Valois : MB 925〜927 ; 3 LPs ] (海外盤 LP)

※このスミス盤がグリニの世界最初の全曲録音である模様。バッハも注目したグリニの対位法はドイツ寄りの楽器がいいのか?、アルサスのジルバーマンを使っている。演奏は面白くないが(笑)、まずは歴史的意義を顕彰。
ADDA : 581251〜52


ニコラ・ド・グリニ(1672〜1703) :オルガン作品集(ミサ&賛歌)
シルヴェン・シャラボロ (org)
<録音: 1990 年 9 月>
[ ADDA : 581251〜52 ; 2 CDs ] (海外盤 CD)

※シャピュイ盤を挙げたいところだが「百選」でご覧あれ。シャピュイ盤を小振りにしたような明晰さで、安定感にすぐれるシャラボロ盤を挙げる。切れ味もほどよく流暢な語り口により、グリニの面白さもうまく出ている。
Harmonic Records : H/CD 8613


フランソワ・クープラン(1668〜1733) :聖堂区のためのミサ
ジャン=シャルル・アブリツェル (org)、ペレ/アンサンブル・オルガヌム
<録音: 1986 年 11 月>
[ Harmonic Records : H/CD 8613 ] (海外盤 CD)

※フランソワはオルガン音楽史で過大評価されているが、面白くない。 (註6)  アブリツェルは堅実一筋の演奏だが、バロック時代の聖歌をアルテルナティムで聴けるので、雰囲気豊かに楽しむだけでよしとしよう。
Temperaments : TEM 316012


ジャン=アダム・ギラン(?〜?) :マニフィカトによる4つの組曲
アンドレ・イゾアール (org)、マンドラン/ル・ドゥモアゼル・ド・サンシール
<録音: 1997 年 9月>
[ Tempéraments : TEM 316012 ] (海外盤 CD)

※ギランは未だ謎に包まれた存在。出自もはっきりせず、独人とも仏人とも。しかし、同時代の他の仏オルガン作曲家にはないエキゾチシズムやロマンが漂う。初めてアルテルナティムで録音したイゾアールの新盤がよい。

百選盤

 Fnac Music : 592316


ルイ=ニコラ・クレランボー(1676〜1749) :オルガン曲集、聖歌とモテット
ジャン・ボワイエ (org)、マンドラン/ル・ドゥモアゼル・ド・サンシール
<録音: 1993 年 6月>
[ Fnac Music : 592316 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※クレランボーはとっつきやすい反面、ギラギラする脂質的ロマンが鼻につきやすい。このボワイエ盤は珍しくアルテルナティムで奏されているが、こうして聴くクレランボーは古典的枠組みに聞こえ、清涼な味わいを残す。
 EMI : C069-12577


オルガンによるフランスのノエル集
ジャン=ルイ・ジル (org)
<録音: 1973 年頃>
[ EMI : C069-12577 ] (海外盤 LP)

※ノエル集は「百選」推奨のシャピュイ盤も見事だが、若くして世を去ったジルによる録音が素晴らしい。溢れんばかりの生命力に満ちており、力強い輝きと可憐さを併せ持つ表情豊かな演奏が愉しめる。CD 再発を強く望む。

百選盤

Natives : CDNA01


サン=ロック (註17) のクロード・バルバートル(1727〜1799)
ミシェル・シャピュイ、マリーナ・チェブルキナ (org)
<録音: 2002 年 5 月>
[ Natives : CDNA01 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※シャピュイはボワヴァンとともにバルバートルも最近よく取り上げるが、これはほぼ全集に近い。ロシア人の女弟子チェブルキナと交互に録音。シャピュイの演奏は、細部に囚われず、墨痕鮮やかな筆勢で一気に描き切る。
Pierre Verany : PV.785032〜33


革命期から第一帝制期までのフランス・オルガン音楽集
シャンタル・ド・ゼーウ (org)
<録音: 1984 年>
[ Pierre Verany : PV.785032〜33 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※デュフルク先生曰く「此ノ時代ノ風琴音楽ハ頽廃ノ窮ミナリ」だが、むしろ後代のトランスクリプションの原型が転がっている玉石混淆時代と見たい。オルガンに雷を模させたっていいじゃない! 是非ゼーウの骨太な演奏で。
Temperaments : TEM 316021


アレクサンドル・ピエール・フランソワ・ボエリ(1785〜1858) :オルガン作品と宗教作品
フランソワ・メニシエ (org)、アンサンブル・ジル・バンショワ
<録音: 2001 年 2 月>
[ Tempéraments : TEM 316021 ] (海外盤 CD)

※フランスにバッハを初めて紹介したボエリの録音は、古いボワイエ盤やロート盤程度しかなかった (註7) が、筆頭として当盤を推す。メニシエは手堅い演奏ながら、ボエリの古典的傾向をうまく捉えている。
Hortus : 005


ルイ・ジャム・ザルフレード・ルフェビュル=ヴェリ(1817〜1869) (註8)  :ロルガニスト・モデルヌ
ヴァンサン・ジャンブラン (org)、アンサンブル・ヴォカール・ラクサン・グラーブほか
<録音: 1995 年>
[ Hortus : 005 ] (海外盤 CD)

※ルフェビュル=ヴェリとサン=シュルピスの楽器製作者であるカヴァイユ=コルとが不可分の関係にあったことを雄弁に物語った録音。ジャンブランの誠実な演奏とすぐれた考証ともに説得力がある。

百選盤

ADDA : 581279


カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921) :オルガン作品集
ジョルジュ・ブソネ (org)
<録音: 1990 年 10 月>
[ ADDA : 581279 ] (海外盤 CD)

※サン=サーンスはオルガン音楽において過小評価されている 1 人。 彼のオルガン作品は、オルガンそのものに強く拘泥した内容とは言えないが、ブソネにより、古典的で端正な造形美がすっきり引き出されているのがよい。

百選盤

AFKA : SK-284


カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921) :オルガン作品集
トマス・マレー (org)
<録音: 1980 年代初期?>
[ AFKA : SK-284 ] (海外盤 LP)

※サン=サーンスの古典的で端正な音楽性に、より色彩感と優美さを加え、オルガンの機能を駆使して弾きこなしたのが、トム・マレー活動初期の録音。今聴くとやや甘ったるさがあるが、デュナーミクの扱いはうまい。
festivo : FECD 155-156 ; 2CDs


セザール・フランク(1822〜1890) :オルガン作品全集
ジャンヌ・ドゥメシュ (org)
<録音: 1959 年 7 月>
[ festivo : FECD 155-156 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※逆にフランクはオルガン音楽史で過大評価されている 1 人。ドゥメシュ盤を。漠としがちな和声の姿態変容を明快に捉える。表現的な濃さよりも、フランクに纏わりつきがちな靄が一掃され、無駄を語ることがない。

百選盤



10 月号掲載分



MOTETTE : CD 10761


『カヴァイエ=コルのオルガン』 34のオルガン探訪
ルエーデル、フロンメン、アスク、ラルティゴ、ハキムほか (org)
<録音: 1980〜90 年代>
[ MOTETTE : CD 10761 ; 6 CDs ] (海外盤 CD)

※カヴァイエ=コルのドキュメント・アーカイブが CD で再発。34楽器の音のカタログになっている。のみならずブノワ、ロレといった仏ロマン派前期の珍しい作品も多数収録され、貴重な音源でもある。分厚い解説もまた魅力!


RCA : RL 37295


アレクサンドル・ギルマン(1837〜1911) :オルガン・ソナタ集
オディル・ピエール (org)
<録音: 1979 年 6 月>
[ RCA : RL 37295 ; 5LPs ] (海外盤 LP)

※ギルマンは過小評価組の筆頭。後のサンフォニストによる大袈裟なソナタ形式よりも、彼のソナタは遙かに豊かで滋味深く魅惑溢れる音楽だ。ましてピエールの絶頂を捉えたこの録音!これほどの名盤も CD 化されないまま。


MOTETTE : CD40101, 11521〜11591


アレクサンドル・ギルマン(1837〜1911) :オルガン作品全集 vol. 1 〜 9
シェズマルタン、ロート、ブリッグス、ブルム、ロンバールほか (org)
<録音: 1990 年代> (写真は vol.9)
[ MOTETTE : CD40101, 11521〜11591 ] (海外盤 CD)

※ギルマンとデュボアは、なぜか 2 人とも全集企画が仏国ではなく独国から出ていることが興味深い。当盤は演奏的には玉石混淆の寄せ集めだが、偉人ギルマンの作品の全貌を辿れるだけでも十二分に仕合わせかもしれない。


prospect : 01691, 01793, 01893


テオドル・デュボア(1837〜1924) :オルガン作品全集 vol. 1 〜 6
ハンス=ディーター・カラス (org)
<録音:1991 年 5 月、1993 年 7 月> (写真は vol. 3)
[ prospect : 01691, 01793, 01893 ] (海外盤 CD)

※同時代の他作曲家に比べ大作がないためか、デュボアもトッカータが時々取り上げられる以外、ほとんど評価されていないのは無念。当全集は 6 集まで予定されているが、ただいま 3 集でパウゼ中? 取りにくいレーベルなのが難点。


EMI : 5 74866 2


20 世紀フランスのオルガンとオルガニスト(1900〜1950)
トゥルヌミール、ヴィエルヌ、ヴィドール、ジグー、デュプレ、ボネ、ほか (org)
<録音:1920〜30 年代>
[ EMI : 5 74866 2 ; 5CDs ] (海外盤 CD)

※主に戦前フランスの作曲者=オルガニストたちの貴重な音の記録。即興演奏や自作自演など重要な演奏も少なくない。特に重要なのはトゥルヌミールとヴィエルヌの即興。これらは、後にデュリュフレの手で譜起こしされた。

百選盤



Musical Heritage Society : MHS 1430〜1440


シャルル=マリー・ヴィドール(1844〜1937) :オルガン交響曲全集
ピエール・ラブリック (org)
<録音:1971 年 7, 10, 12 月>
[ Musical Heritage Society : MHS 1430〜1440 ; 11LPs ] (海外盤 LP)

※レメンスの筆頭弟子はギルマンとヴィドールの 2 人。しかし、形式主義的冗長なサンフォニスト・ヴィドールがギルマンより人気が高いのは悉皆理解できない。出来映えのムラは承知で、即興性と霊感溢れるラブリックの怪演を。


BNL : 112742 A/B


ルイ・ヴィエルヌ(1870〜1937) :24 の幻想小曲集
オリヴィエ・ラトリ (org)
<録音:1988 年 4 月>
[ BNL : 112742 A/B ; 2CDs ] (海外盤 LP)

※ヴィエルヌの交響曲もまた冗長な半音階で聴き手に無用の忍耐を強いる。ヴィドール同様、交響曲ならラブリック盤だが、ここではヴィエルヌらしさに溢れる「幻想小曲集」を推奨。音色表現は淡すぎるが、ラトリ盤を推す。


Arion : ARN 268105


シャルル・トゥルヌミール(1870〜1939) :『神秘のオルガン』(抜粋)
ジョルジュ・ドゥルバレ (org)
<録音:1977〜79 年>
[ ARION : ARN 268105 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※トゥルヌミールはこの代表作録音で再評価された。膨大な作品集からの抜粋だが、選曲の案配は大変よい。彼の音楽的基盤が典礼音楽に存することを理解できよう。ドゥルバレ後年の全曲録音盤に比べ、動的な生命力は段違い。

百選盤

Arion : ARN 68158


シャルル・トゥルヌミール(1870〜1939) :『キリストの 7 つの言葉』 op. 67
ジョルジュ・ドゥルバレ (org)
<録音:1969 年>
[ ARION : ARN 68158 ] (海外盤 CD)

※トゥルヌミール・エヴァンジェリスト、ドゥルバレ最初の (註9) トゥルヌミール録音。後期になるほど機能和声が溶解し、大胆な思弁性と詩性が混淆する独自の世界を繰り広げる。本作品も神秘的恤(めぐ)みから音楽が結実した逸品。


ADDA : 581276


シャルル・トゥルヌミール(1870〜1939) :後期オルガン作品集
ジョルジュ・ドゥルバレ (org)
<録音:1992 年 10 月>
[ ADDA : 581276 ] (海外盤 CD)

※秘教的想像力から紡ぎ上げられたトゥルヌミール晩年の作品群は晦渋だ。サンフォニスト的華麗な音響意匠を纏いながら、しかし彼が本質的に索めたものは音楽を通じた接神体験であり、霊感に基づく詩魂であったのだと理解できる。


VLS Records : VLC 1199, 0203, 0701, 0800


シャルル・トゥルヌミール(1870〜1939) :オルガン作品集 vol. 1〜4
ティエルト・ファン・デル・プレフ (org)
<録音:1999 年 10 月〜 2001 年 10 月> (写真は vol. 1)
[ VLS Records : VLC 1199, 0203, 0701, 0800 ] (海外盤 CD)

※『神秘のオルガン』全曲録音は上記ドゥルバレが Accord で完了。あとは独 Cybele のミュラーとこのデル・プレフが進行中だ。彼はさらにトゥルヌミールのオルガン作品全曲録音も視野に入れ、世界初録音満載の当シリーズは期待大。


Arkay Records : AR 6111


アンリ・ミュレ(1878〜1967) :オルガン作品集
トマス・マレー (org)
<録音: 1991 年?>
[ Arkay Records : AR 6111 ] (海外盤 CD)

※風琴音の画人ミュレの決定盤。代表作「ビザンチンの風景」は、実は幼児期に縁あったサクレ=クールの印象記。トゥルヌミールの評言どおり、捉えどころのない魅力が混在するが、マレーの職人芸で聴く彼は穏やかな詩人だ。


Pavane Records : ADW 7357


ジョゼフ=エルマン・ボナール(1880〜1944) :オルガン作品集
ジャン=ピエール・ルコーデ (org)
<録音: 1994 年>
[ Pavane Records : ADW 7357 ] (海外盤 CD)

※上記ミュレと並ぶ風琴音の画人ボナール(画家とは別人物)。ミュレが印象派なら、ボナールは後期ターナーに通じるかも。彼の幻想的で陰翳濃い音楽の風情を聴くと、ホイットロックなど英国作曲家に近い感性に思える。


Aeolus : AE-10221


マルセル・デュプレ(1886〜1971) :サン=シュルピスでの邂逅
スザンヌ・シェズマルタン (org)
<録音: 2000 年 11 月>
[ Aeolus : AE-10221 ] (海外盤 CD)

※デュプレは、作品も即興も音色感がひどく鈍重。彼の和声の晦渋さは、それに起因しているかも。私的には高揚感ある「十字架の道行き」を推すが、大作の前にまずは小品や抜萃による俯瞰でお味見を。「十字架」はその後で。


BNL : 112508


モーリス・デュリュフレ(1902〜1986) :オルガン作品全集
オリヴィエ・ラトリ (org)
<録音: 1985 年?>
[ BNL : 112508 ] (海外盤 CD)

※デュフルクはデュリュフレを「古旋法に身を置く洗練の人」と捉えるが、それは彼の全てではない。寡作な彼の主要オルガン曲は 1920〜42 年の間、師よりオルガン表現技法を肌身で修練 (註10) した時代だけ。若きラトリの意欲溢れる録音で。

百選盤

Caliope : CAL 9939


モーリス・デュリュフレ(1902〜1986)・トリビュート
チエリ・エスケシュ (org)、マッシーニ/ケンブリッジ・ヴォイシィズ
<録音: 2002 年 7 月>
[ Calliope (註11)  : CAL 9939 ] (海外盤 CD)

※エスケシュによる「組曲」の快演と「4 つのモテット」への応答即興が特に聴きもの。激流と静粛な深淵とが交差し、デュリュフレのオルガン作品に潜在する強靱さが強い求心力から牽引され、初めて顔を出したといってよい。

百選盤

Columbia : OS-428-R


モーリス・デュリュフレ(1902〜1986) :オルガン作品集
モーリス・デュリュフレ、マリー=マドレーヌ・デュリュフレ (org)
<録音: 1963 年>
[ Columbia : OS-428-R ] (国内盤 LP)

※エラート原盤、夫妻による自作自演。CD でも既発なので初期国内 LP を挙げてみた。常々思うに、デュリュフレ本人が「組曲」のトッカータを録音しなかったのは彼がこの曲を気に入らなかったからだけなのだろうか....。


Aeolus : AE-10211


モーリス・デュリュフレ(1902〜1986) :オルガン作品全集
シュテファン・シュミット (org)
<録音: 2001 年 7 月>
[ Aeolus : AE-10211 ] (海外盤 CD)

※デュリュフレの作品は、本来、機能的な現代楽器で弾かれる方がより内容が引き立つはず。この録音を聴いてその思いをなお強くした。シュミットの演奏は粗削りなところが目立つものの、意欲的な音響表現の姿勢は好ましい。


festivo : 6951 842


ジャン・ラングレ(1907〜1991) :グレゴリアン主題に基づく即興演奏
ジャン・ラングレ (org)
<録音: 1986〜1987 年>
[ festivo : 6951 842 ] (海外盤 CD)

※ラングレ晩年のグレゴリアン主題に基づく即興演奏の拾遺。複雑で濃厚な即興の数々。論理的直線性から離昇し、典礼即興とはいえ特異な世界観を築く。これを聴くたびジャズ・ピアニスト、ハービー・ニコルスを想起する。

百選盤

Nimbus : NI 5408


ジャン・ラングレ(1907〜1991) :オルガン作品集
ケヴィン・ボウヤー (org)
<録音: 1992 年 9 月>
[ Nimbus : NI 5408 ] (海外盤 CD)

※作曲者=オルガニスト=即興演奏家の伝統を担う音楽家として、また教育者としてラングレが残した足跡は大きい。これは 2 作のサンフォニーを主とした作品録音。ボウヤーはやや知的に傾くが、ラングレの妙味は素直に現れている。


EMI : CZS 7 67400 2


オリヴィエ・メシアン(1908〜1992) :自作自演集
オリヴィエ・メシアン (org)
<録音: 1956 年 6〜7 月>
[ EMI : CZS 7 67400 2 ; 4CDs ] (海外盤 CD)

※メシアンのオルガン作品は、戦後に傑作がない。 (註12) また本人によるトリニテの楽器以外で納得できる録音例も少なく、自作自演盤を。唯一トリニテ教会だけが神と交歓できる場であった彼は、それ以外での風琴演奏は固辞し続けたのだ。


EMI : C 069-12798


ジャン・アラン(1911〜1940) :オルガン作品集
ジャン=ルイ・ジル (org)
<録音: 1973〜1974 年>
[ EMI : C 069-12798 ] (海外盤 LP)

※若くして第 1 次大戦に散ったジャン・アランは独自の境地を持つ作風。十指に余る妹御 (註13) の録音は遠慮したい。ルブラン盤も面白い (註14) が、ベストはジル盤。ともに夭逝。リズムのキレと躍動する生命力は、聴き手を魅了してやまない。


Musical Heritage Society : MHS 3042〜3044


ジャンヌ・ドゥメシュ(1921〜1968) :オルガン作品集
ピエール・ラブリック (org)
<録音: 1971 年 7,12月、1972 年 10 月>
[ Musical Heritage Society : MHS 3042〜3044 ; 3LPs ] (海外盤 LP)

※師匠デュプレをして天才と言わしめたドゥメシュ。ショスタコーヴィチの女弟子ウストヴォルスカヤにも類比される存在? (註15) 遺された彼女の演奏も凄いが、作品もエキセントリック。中でも「6 つのエチュード」は技巧・音楽とも凄絶。ラブリックの閃きが頼り。



Solstice : SOCD 94〜96


ピエール・コシュロー(1924〜1984) :ノートルダムのオルガニスト
ピエール・コシュロー (org)
<録音: 1968〜71 年、1973〜77 年、1984 年>
[ Solstice : SOCD 94〜96 ; 3CDs ] (海外盤 CD)

※コシュローの即興録音とはまさに「書かれざる」作品群なのだ。彼の作品演奏、コンサート即興、典礼即興の 3 面からベストチョイスでとりまとめられたもの。オルガン即興演奏史に深い爪痕を残したコシュローの濃厚な生命の記録。

百選盤

Solstice : SOCD 200〜201


ピエール・コシュロー(1924〜1984) :1969 年夏、12 の即興演奏
ピエール・コシュロー (org)
<録音: 1969 年>
[ Solstice : SOCD 200〜201 ; 2CDs ] (海外盤 CD)

※1969 年夏、コシュローが可搬型ポジティフでツァーを行った記録。彼の音楽が決して大オルガン固有の音響に支配されたものではなく、小型オルガンでも自己表現を確実に浸透させることが可能だったことがわかるだろう。

百選盤

Dorian : DOR-90101


ジャン・ギユー(1930〜) :即興演奏の芸術
ジャン・ギユー (org)
<録音: 1987〜1990 年>
[ Dorian : DOR-90101 ] (海外盤 CD)

※ギユーによる計 4 ヶ所での即興録音を拾遺したアルバム。峻烈で複雑な音響、また豊かな知性 (註16) と感性が鋭敏に磨かれた抽象的形象の回廊を彷徨するがごとし。ギユーの骨頂を遺憾なく発揮、現代オルガン即興演奏の一頂点をなす。

百選盤

IFO : CD 05011


ナジ・ハキム(1955〜) :マロン派聖歌と即興演奏
ナジ・ハキム (org) アル・スカイェム/パリ・レバノン聖母教会合唱団
<録音: 1999 年 3 月>
[ IFO : CD 05011 ] (海外盤 CD)

※ハキムはレバノン出身。レバノンのキリスト教はマロン派(マロン派といえばファイルーズ様!)。キリスト降誕に寄せるマロン派聖歌とオルガン即興。西欧とアラブ世界の融解とともに、ハキムの驚異的な平衡感覚を知る 1 枚。


Rejoice : JOYCLASSIC 004


ナジ・ハキム(1955〜) :ソバージュ『芽生える魂』 朗読と即興演奏
ナジ・ハキム (org)、カトリーヌ・サルヴィア(朗読)
<録音: 1998 年 12 月>
[ Rejoice : JOYCLASSIC 004 ] (海外盤 CD)

※メシアンの母セシル・ソバージュの詩による即興。メシアン本人の録音は特に感心しなかったが、同じトリニテ教会でのハキムの録音は、詩想をよく映じた想像力豊かで独創性を湛えた即興。明るく繊細な色彩感も彼ならではの持ち味だ。

百選盤

Chamade : CHCD 5635


チエリ・エスケシュ(1965〜) :主要聖務のための即興演奏集
チエリ・エスケシュ (org)
<録音: 1995 年 10 月>
[ Chamade : CHCD 5635 ] (海外盤 CD)

※エスケシュは現代風琴の驚異だ。振幅の激しい情念表現とスパコンのような迅速膨大な伝統書法の処理能力に驚倒。4 主要聖務に資する即興。彼の即興は、視覚的にもよく訴求してわかりやすいが、激しい情念の波には恐怖を覚える。

百選盤

Calliope : CAL 9937


チエリ・エスケシュ(1965〜) :自作自演集
チエリ・エスケシュ (org)、オービエ(tp)、アンサンブル・ヴォカール・ソリ・トゥッティ
<録音: 2001 年>
[ Calliope : CAL 9937 ] (海外盤 CD)

※豊かな感興表現に盈(み)ちた即興に比べ、エスケシュの作品の方は高度に知的・修辞的で、やや製りものくささを感じる。最初と最後を「来たれ、異邦人」による見事な即興で囲む。作品では「エスキスIII」の暴力性は格別。








(註1) 私のミスで、誌面には「グリニやルベーグ」と書いてしまった。深謝。再録音に替わったのはグリニと大クープランだけで、あとは LP ままである。但し、私の購入した盤は CD 初発で、その後の再発盤では確認していない。


(註2) この Vox のセット・シリーズ名は「A Survey of the World's Greatest Organ Music」。その他ドイツ編、イタリア編などあったが、風琴音盤蒐集大家の境氏に伺ったところ、結果的に全作完結しなかったと聞いている。


(註3) 原文では「1960 年代初期?」との表記。


(註4) 当盤もアルテルナティム(歌唱とオルガン演奏を交互に行う演奏形態)につき、歌唱者名の記載漏れ。Incipit(冒頭句の詠唱)及び Verset en Plain-chant の歌唱を行っている。


(註5) ピエール・ヴィダル(Pierre Vidal)のこと。特異なバッハ解釈で知られる。


(註6) 大クープランについては、
本文編 (1) の(註11)を参照のこと。別に音楽史の評価に反対しているつもりはない。私の耳には「面白いとは感じず、退屈だ」と放言しただけである。私個人では、大クープランと同じかそれ以上に、ここでは挙げていなかったルイ・マルシャン(1669〜1732)の洗練と剛毅を好む。マルシャンの方が、おるフェチ度も高く、オルガン音楽としての楽しみが強いと感じている。9 月号掲載音盤数を 27 枚と半端にしたため、マルシャンを割愛したのは残念。マルシャンといえば、1717 年、ドレスデンでの大バッハとの競演で敵前逃亡した逸話があるが、真偽のほどは定かではない... とはいえ、JSB もマルシャンの楽譜をしっかり学んでいる筈である。


(註7) こう書いた後で、そのダニエル・ロートが
AEOLUS レーベルからボエリの新譜(再録音)をリリースした。因みに彼のボエリ(EMI)は 1971 年録音で、おそらく彼のデビュー時だろう。


(註8) Louis James Alfred Lefébure-Wély と名前は長い... また、原文ではルフェビュル=ヴェリ(1817〜1870)と間違っており、没年を 69 年に訂正。


(註9) ドゥルバレは 2002年、当曲を Accord に再録音しており、最近リリースされた。こちらはサン=シュルピスでの録音。


(註10) 原文では「収斂」としていた。変換ミスを修正。


(註11) 原文では「Calioppe」としていた。修正。


(註12) 私はメシアンを低く評価しているわけではない。しかし、現在、メシアンを多角的に勉強中の我が耳からしても、この文章はかなり乱暴な議論であり、軽率な書き方だったことは認めたい。「戦後に傑作がない」とは、51 年の「Livre d'Orgue(オルガンの書 or オルガン曲集)」をどう評価するかの見方でほぼ決まるような気がする。私的にはメシアンの特徴である「耽美とエロス」が、トゥルヌミール的水脈の中に遡及できる「革新者メシアン」を最大評価としてきたため、この作品の音楽史的な意義はわかるものの、冷淡に接してきた。このあたりは、調査しているところなので、いずれ議論を持ちたい。一方、「耽美とエロス」のトゥルヌミール的水脈という意味では、84/85 年の「Livre du Saint Sacrement(聖体秘蹟の書 or 聖体秘蹟曲集)」でのこの回帰ぶりはどう解釈すべきなのかという問題も、まだ未解決である。


(註13) マリー=クレール・アランのこと。エラートで全集録音でも複数ある上に、「リタニ」ともなると、一体、何度録音しているのかすらはっきりしないほど多い。


(註14) エリック・ルブラン盤(NAXOS)で、通常弾かれるようなアラン的色合いより脳天気ともいえる明るく明解な演奏で、私は意外と気に入っている。


(註15) これは「実質的に似ている」というのではなく、「女弟子が師匠を超えた」という単なるアナロジーである。


(註16) 原文は「知的」となっているが、私のミス。訂正。


(註17) 原文は「サン=ロッシュ」と書いていたが、サン=ロックが正しい発音そうだ。訂正。




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