Kubelik's Mercury Recordings





MERCURY : PHCP-3401
Moussorogsky : Pictures at an exhibition
( MERCURY : PHCP-3401 ; Japanese press )
  1. Moussorogsky : Pictures at an exhibition
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3402
Dvorak : Symphony No. 9 " From the New World "
( MERCURY : PHCP-3402 ; Japanese press )
  1. Dvorak : Symphony No.9 in E minor op.95 "From the New World"
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3403
Tchaikovsky : Symphony No. 6 "Pathetique"
( MERCURY : PHCP-3403 ; Japanese press )
  1. Tchaikovsky : Symphony No.6 in B minor op.74 "Pathetique"
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3404
Tchaikovsky : Symphony No. 4
( MERCURY : PHCP-3404 ; Japanese press )
  1. Tchaikovsky : Symphony No.4 in F minor op.36
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3405
Brahms : Symphony No. 1
( MERCURY : PHCP-3405 ; Japanese press )
  1. Brahmus : Symphony No.1 in C minor op.68
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3406
Mozart : Symphony No.38, 34
( MERCURY : PHCP-3406 ; Japanese press )
  1. Mozart : Symphony No.38 in D major K.504 "Prague"
  2. Mozart : Symphony No.34 in C major K.338
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : 434 379-2
Smetana : My Country
( MERCURY : 434 379-2 )
  1. Smetana : Symphonic Cycle " Ma Vlast (My Country) "
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3408
Bartók and Bloch
( MERCURY : PHCP-3408 ; Japanese press )
  1. Bartók : Music for Strings, Percussion and Celesta
  2. Bloch : Concerto Grosso No. 1
George Schick (pf), Irwin Fischer (celesta), Edward Metzenger (tim)
Allan Graham, Lionel Sayers, Thomas Glenecke (percussion)
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)

MERCURY : PHCP-3409
Hindemith and Schönberg
( MERCURY : PHCP-3409 ; Japanese press )
  1. Hindemith : Symphonic Metamorphoses on Themes by Weber
  2. Schönberg : Five Pieces for Orchestra op. 16
Chicago Symphony Orchestra
Rafael Kubelik (dir)



クーベリックが好きであった。そのクーベリックが 8 月に逝った。
彼が CSO 時代( 1950/53 年)に Mercury に残した、以下の 9 つの録音を聴く。正直、こんなに佳演揃いとは思わなかった。クーベリックは、実に覇気に盈ちた指揮者であった念を深めた。クーベリックは僅か 3 シーズンの在籍のうち 60 曲ものコンテンポラリ作品をプログラムに入れ、保守的なシカゴの聴衆の度肝を抜いたと聞く。それが却って理事会や地元の評論家(特に「シカゴ・トリビューン」紙のキャシディ女史)などと軋轢を深め、結局シカゴを去ることになった。だが思うに、たった 3 シーズンのクーベリックこそが実は CSO の黄金期ではなかったか。CSO の力量はそのままに、後続の音楽監督は、単に世評受けの次元でしかなかったように思う。クーベリックとしては 35〜39 歳というまだ若い年齢ではあったが、ここでの録音は巨匠の域を垣間見せるものばかりである。

録音のせいもあるのか、クーベリックの特徴と思われている「微温的」というニュアンスはこれらの録音には非常に薄く、むしろ鮮明でストレートな力感がある。それでも弦楽器は、分厚く柔らかな響きを引き出している。実際、後年のクーベリックと比べ、Mercury に彼が残した録音たちは、鋭角的で緊張感の高い硬質な音づくりに思える。そこで、思い出したように引っ張り出した小石忠男氏の『世界の名指揮者』の中に、その解らしきものがあったので引用させていただく。

「つまりクーベリックとシカゴのレコードは、あのかたいひびきの躍動感を、かなり録音でつくっていたと考えられるのである。したがってのちにヨーロッパ録音のクーベリックを必要以上に雰囲気的な音と錯覚させ、覇気がにぶったと私たちに考えさせることもあったのは、いまにして思えばシカゴの録音のためではないだろうか。指揮者の音というものは彼自身の人格と同じで、たった数年のうちに大きく変わるわけがない。クーベリックとシカゴであたえられた印象に、録音効果とあいまったあざやかさが強ければ強いほど、あとのヨーロッパ録音のあるものが、クーベリックをスランプと判断させたことがあるのかもしれない」
(小石忠男『世界の名指揮者』 p.210)


1. ムソルグスキイ「展覧会の絵」

1951/4/23-24 の録音。CSO は安定した分厚い響きを持つが、色彩感にも富んでいる。クーベリックの指揮も多彩な色合いを引き出すが、どちらかといえばやや力ずくで、闊達な筆の勢いで爽快に描き切ったという感もある。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」から「カタコンブ」あたりの緊張感溢れる対比は見事だし、「ババ・ヤーガ」「キエフ」の盛り上がりも聴きもの。

2. ドボルジャーク「新世界」

1951/11/19-20 の録音。同曲には VPO と BPO、そして有名なチェコ・フィルとの録音があるが、VPO よりはずっといいし、最もいい演奏と言えるかもしれない。弦優位の厚い響きとふくよかさというクーベリックの持ち味は、ここではっきり現われている。感心するのは、均整のとれた音楽の造形ではあるが、それでいて情感は豊かなことである。後年のような、豊かな感興と彫りの深い表情には至らず、やや直線的ではあるが、作品の構成をうまく出している。

3. チヤイコフスキイ「悲愴」

1951/4/21-22 の録音。これは凄い。クーベリックのチャイコフスキーというと違和感があるが、これら一連の録音の中でも非常にホットな演奏で、これがクーベリックかと思うほど直線的で劇的な高揚と緊迫感が溢れ、惚れ込んだ 1 枚。決して甘美にならない。同じ CSO でのショルテイやアバドの「悲愴」より遙かにいい。ストレート過ぎると思う人がいるかもしれないが、カラヤンのような技とは違い、迸る情熱と淡い優美さとが素直に現われ、ドラマチックな名演となっている。

4. チヤイコフスキイ「交響曲第4番」

1951/11/19-20 の録音。後年、バイエルン放送響との放送用録音が CD で出ているが、聴き比べると、緩徐楽章の情感溢れる表現などはバイエルン放送響には至らないが、CSO の方がやはり直線的な力感が明快に現われている。妙な粘着性がないのがいい。しかし、後年のクーベリックの録音には、雄渾さは見られても、こういう男臭い力強さがはっきりしなかったので、その意味で「悲愴」ともども貴重な 1 枚だと思う。

5. ブラームス「交響曲第4番」

1952/4/21 の録音。厳格な表現だが、粘らず爽快。音楽の造形は見事なほど大きく安定し、逞しい推進力を持っているものの、やや気負いあり。やはりバイエルン放送響との録音に軍配を上げる。しかし、VPO との録音と比べると CSO 盤の推進力を買う。多少のムラはあるとしても、弦の厚いカーテンの奥から魅力的な管の歌が流れるという、後年見られるクーベリックの特徴がここに既に出ている。4 楽章のフルート・ソロはベーカーだろうか...

6. モーツァルト「交響曲第38・34番」

1953/4/3-5 の録音。後年、モーツァルトのうまい指揮者の代表格とされたクーベリックだが、ここでは滋味溢れる温みと生気に充ちたモーツァルトではなく、新鮮で爽快闊達なモーツァルトである。しかし実のところ、そう面白いものではなかった。快速感と躍動感が溢出しているあたり、やはりクーベリックの当時の年齡も感じざるを得ないが、CSO の明快なアーティキュレーション、音の若々しさがいい。

7. スメタナ「我が祖國」

1952/12/4-6 の録音。クーベリックはこの後、VPO、BSO、バイエルン放送響、チェコ・フィルとこの曲を録音しているが、郷愁と感興とが織りなす深い表現、しかも筆勢逞しく描き切る晩年のチェコ・フィル盤には特別なオーラが存在するのでちと別格としても、なかなかこの CSO との演奏は骨格の明快で引き締まった佳演である。或る意味ではバイエルン放送響との録音より、音楽表現には強い説得力を持つように思える。ただ、どうにも VPO との録音はやはりよくない。

8. バルトーク/ブロッホ

1951/4/23-24 の録音。瑞々しく磨きぬかれたバルトーク。表現はあくまで厳しく引き締っているが、BSO との「管弦楽のための協奏曲」同様、高雅な雰囲気さえ漂う。分解能の徹底した演奏とは違ったバルトークで、クーベリックならでは。ただ、かなり積極的に音楽に攻め込んでいる感がある。ブロッホのコンチェルト・グロッソ第 1 番は初めて聴いたが、弦のアーチキュレーションなど味わいが格別で、切れ味も良い。名盤。

9. ヒンデミット/シェーンベルク

1953/4/3-5 の録音。先のモーツァルトとともに、最後となったシーズンの録音。CSO のアンサンブルの切れ味は抜群でボディのしっかりした音だが、表現の細やかさも特筆すべきと思う。ヒンデミットはもっと官能的でもいいと思うが、意外にドライに接している。シェーンベルクもドライながら、香りの立つような味わいがあるのが不思議。クーベリックの現代ものは、言葉に言いあらわしがたい「華」があっていい。

( 1996.10 / 2001.10.14 改 )








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