Wagakokoro no Ressentiment / 1996.10


3.



ERATO : WPCC-4276


Janáček : Capriccio, Concertino etc.
( ERATO : WPCC-4276 )
  1. Capriccio
  2. Concertino
  3. Dans les brouillards (In the Mist)
  4. Sonata 1.X.1905
Viktoria Postnikova (pf)
Solistes de l'Orchestre de Paris
Gennadi Rojdestvenski (dir)


Harmonia Mundi : 901508


Janáček : Œuvre pour Piano
( Harmonia Mundi : 901508 )
  1. 1.X.1905 [ Sonata ]
  2. Sur un sentier recouvert ( On an overgrown Path )
  3. Dans les brumes ( In the Mist )
  4. Souvenir ( Memory )
Alain Planes (pf)


DGG : 429 857-2


Janáček : Klavierwerke
( DGG : 429 857-2 )
  1. Auf verwachsenem Pfade ( On an overgrown Path )
  2. Im Nebel ( In the Mist )
  3. Tema con variazioni ( Zdenka Variations )
  4. Sonata 1.X.1905 "From the street"
Rudolf Firkušný (pf)


RCA : 60147-2-RC


Janáček : Piano Works
( RCA : 60147-2-RC )
  1. Sonata 1.X.1905 ("From the street")
  2. On an overgrown Path
  3. A Recollection
  4. In the Mist
Rudolf Firkušný (pf)




ヤナーチェク月間の締め括りを 4 盤。

ルディに前後して、ピアノ作品とピアノを含む室内楽作品を聴く。ポストニコワ、プラネス、そしてフィルクシュニの RCA 盤の 3 つ。さらにフィルクシュニは、DGG 盤が CD 復刻を知らず、見つけて購入。フィルクシュニの DGG 盤は遙か以前、プラネスはルディの少し前、その他はルディの後に聴く。各々の持ち味が出ていて面白かったし、ルディを含め、ヤナーチェクのピアノ作品を見直すこととなった。

ポストニコワ盤。カプリッチョとコンチェルティーノは、ロジェストヴェンスキのリードが強すぎ、ルディ盤とは趣きはかなり異なる。この盤では、コンチェルティーノの方が魅力的。カプリッチョは幻想的味わいの濃い演奏で、ポストニコワのピアノが役割的に弱いのが残念だが、こういうアプローチはもともとの好みだった。もっと官能的でもよかったのではと思う。ポストニコワは、部分的に閃きはあるが、ヤナーチェクでは流暢な弾き方になっており、ルディは勿論、フィルクシュニの情緒的な味わいとも全く違う。「霧の中で」をこういう感じで弾かれると、妙にロマンチックに堕してしまう。1905 年ソナタもどうも something gaudy...

プラネス盤。一聴、フィルクシュニ風のニュアンスも感じるが、どちらかといえばクロスリーに近い。土臭さのようなものより、淡泊で精細なヤナーチェクへのアプローチなのだが、静寂と昂揚の対比を意識的に強意している。しかし、やや意識的に標題性を汲み過ぎている気がしないでもない。大袈裟な表現になりかかると大味傾向になり、1905 年ソナタなど、どうも力強い感傷表現になつてしまう。「草陰の小径」は悪くないが、濃厚傾向なので、もっと淡々でもいい。

フィルクシュニ盤は、DGG 盤も RCA 盤も微温的だが、決して甘くはない演奏。RCA 盤を聴いた結果、個人的には録音の違いもあるが、DGG 盤の硬質なタッチの方を好む。
フィルクシュニのヤナーチェクは、新旧盤とも「草陰の小径」がよい。抒情性を美化し過ぎず、適度に淡く、適度に渋く聴かせる。録音に 18 年も開きがあるが、どちらも基本は同じ。無理に評価する必要はないが、RCA 盤の方が DGG 盤に比べ表現はやや柔和ながら、テンポの揺れや微細なニュアンスの動きが自然であり、詩情はふくよか。

結局、どれがベストと言うつもりはないが、この中ではフィルクシュニの DGG 盤が最も好みである。後日、様々な演奏を自分の脳裏に蓄積したところで、また比較して聴いてみたい。ルディ盤が群を抜いて一番とは今は言い切れぬが、感心するところかなり大だったのは事実。「霧の中で」は、厳格な自省性みたいなものを摘出したルディの演奏は、他盤を凌駕している。これまで鄙びた独特の風雅と抒情こそ、ヤナーチェクのピアノ作品の良さだと思っていた愚が、これにて一掃された意義は大きい。



2.



EMI : CDC 7 54094 2


Janáček : Œuvre pour Piano
( EMI : CDC 7 54094 2 )
  1. Sonata 1.X.1905
  2. Mlhach (In the Mist)
  3. Vzpominka (A Recollection)
  4. Po zarostlem chodničku (On an overgrown Path)
  5. Tři Moravské Tance (Three Moravian Dances)
Mikhaïl Rudy (pf)


EMI : 5 55585 2


Janáček : Musique de chambre
( EMI : CDC 7 54094 2 )
  1. Conte pour violloncelle & piano
  2. Presto en re mineur, pour violloncelle & piano
  3. Sonate pour violon & piano
  4. Capriccio pour piano ( main gauche ) & 7 instruments à vent
  5. Concertino pour piano & orchestre de chambre
Mikhaïl Rudy (pf)
Pierre Amoyal (vn), Gary Hoffman (vc)
Solistes de l'Orchestre de l'opera National de Paris
Sir Charles Mackerras (dir)




この10月は何年か振りにヤナーチェク月間になってしまった。
ミハイル・ルディというピアニストに格別の配慮があった訳ではない。以前、スクリヤビンの後期作品集しか聴いたことがなかった。ccd-ML でルディの話題が出て、そんなに面白かったか、と吹っ飛ばしておいたディスクを聴き直してみるとなかなか面白い。そのルディのヤナーチェクはとてもよいというので、早速購入し聴いてみた。これは良い。

ハーゲンQによる弦楽四重奏曲で目を覚まされ、そしてこのルディである。ルディのヤナーチェクは、特に過度の演出も鄙びた土臭さも強要しない。引き締めた表現でヤナーチェクのピアノ作品の持つ音楽の骨格を明快に剔出する。それゆえ作品が聴き手に正当にその音楽性を主張する。例えば 1905 年ソナタは、フィルクシュニでは昂揚と静の対比をなるべく滑らかにし、作品に統一した色調を保とうと演出しているが、ルディはおかまいなしにその対比を差異として浮き上がらせ、却ってアンバランスをきっぱり映し出すことで、その不安げな曲調を明快に引き出す。フレージングも明快。ヤナーチェク独特の持ち味が明確に出てくる。だが「草陰の小径」で情緒的な味に欠けるかといえばそうでもない。息の長いフレーズなどをうまく色付けし、飽きさせない。

室内楽作品集も、カプリッチョとコンチェルティーノについては、これまで聴いた演奏に比べ、情緒的・官能的な曲調を揮発させ、音楽の構成要素をざっくり截り出した感がある。カプリッチョでは、倦怠的でうす昏く、やや茫洋とした味わいがこの曲の持ち味だと思っていたが、単に雰囲気的ではなく、ヤナーチェクが霊感赴くままに筆を運んだ曲想の自由さへひた走る。コンチェルティーノはなおその感が強い。第 1 楽章などヒンデミットの金管ソナタを聴いているような感覚。また第 2 楽章などは皮肉めいた高尚遊戯的な要素が楽しめる。



1.



Deutsche Grammophon : POCG-4147


Janáček : Streichquartett
( Deutsche Grammophon : POCG-4147 )
  1. Janáček : Streichquartett Nr.1 " Kreuzersonate "
  2. Janáček : Streichquartett Nr.2 " Listy duverné (Intime Briefe) "
  3. Wolf : Serenade G-dur für Streichquartett " Italienische Serenade "
Hagen Quartett


Supraphon : COCO-78426


Janáček : Streichquartett
( Supraphon : COCO-78426 )
  1. Streichquartett Nr.1 " Kreuzersonate "
  2. Streichquartett Nr.2 " Listy duverné (Intime Briefe) "
Janáček Quartet




ヤナーチェクの弦楽四重奏曲の佳演を聴きたくなった。

早速お薦め 2 盤を購入し、ハーゲンQから聴く。この演奏には全く唖然とした。これは或る意味でヤナーチェクではない。第 1 番などはリゲティの第 2 番みたいですというコメント(野々村氏)には首肯。音色の強烈な對比、この 2 曲に特有なドラマ的モチーフの描出などかなり強意され、デフォルメされているが、素晴らしい解釈。深層を抉りとるような演奏自体も恐ろしく鋭敏・怜悧。
両曲とも音色の対比は素晴らしいが、特に第 1 番は凄い。この曲で、ポンティチェロ奏法をこれほどまで効果的に(結果として前衛的に)やった例はない筈。特に第 3 楽章など甘美な進行の中のポンティチェロの暴力的割り込み、そしてこれが次第に拮抗激化してゆくさまは、カット割り込みの前衛映画の内面心理劇のよう。
第 2 番は目まぐるしく動く調転回とテンポ変化の処理が際立ってうまく、各楽章内での動きは複雑であるが、曲全体の構成の統一化が取れている不思議な持ち味を素晴らしく巧妙に聴かせてくれた。特にここでも音色的対比は素晴らしく、第 3 楽章のリズム処理も見事。

こんな演奏を聴いた後すぐに、ヤナーチェクQを聴いたのはまずかった。ミラン・クンデラが『裏切られた遺言』で、彼等の演奏を強く支持しているとの野々村氏の指摘。気を取り直して聴く。ざっくり概括すれば、この曲の心理劇的な描写とオペラにも通じる音楽語法の妙諦を聴かせてくれる演奏で、もともとは私はこういう演奏を聴きたかったのだと思う。一聴、スメタナQとスタンスは近いが、こちらの方がもっとヤナーチェクの内面的なドラマを深く剔抉しているように思う。





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