Wagakokoro no Ressentiment / 2003. 11


4.



Emarcy : 014 748-2

Silje Nergaard : At First Light
( Emarcy : 014 748-2 )
  1. There's Always A First Time
  2. Be Still My Heart
  3. Let There Be Love
  4. So Sorry For Your Love
  5. Now And Then
  6. Two Sleepy People
  7. Keep On Backing Losers
  8. Blame It On The Sun
  9. At First Light
  10. There's Trouble Brewing
  11. Japanese Blue
  12. Lullaby To Erle
Silje Nergaard


Emarcy : 986 564-8

Silje Nergaard : Nightwatch
( Emarcy : 986 564-8 )
  1. How Am I Supposed To See The Stars
  2. Once I Held A Moon
  3. Dance Me Love
  4. You Send Me Flowers
  5. I Don't Want To See You Cry
  6. In A Sentence
  7. Take A Long Long Walk
  8. This Is Not America
  9. Be Gone
  10. Borrowing Moons
  11. Unbreakable Heart
  12. On And On
Silje Nergaard



昼休み何気なくディスクユニオン・お茶の水店にて。
今年は後半になるにつれ体調がおかしい。野菜を食い足りないのかと思ったら「本厄」の由。はぁ。そんなものに無縁と生きてきたが、無理をするなという御休処なのかも。そういう中で、今夏堪能したリサ・エクダール(Lisa Ekdahl)路線で、安寧をもたらす女の歌をと思っていたら、丁度、シリエ・ネルガールドを見つけ、2 盤買ってみた。彼女は今やノルウェーを代表するジャズ・シンガー。90 年、パット・メセニーがプロデュースした《Tell Me Where You're Going》(1st)でデビュー、これが日本では評判となり「セリア」名の方が通っているはず。が、2nd の《Silje》以来、泣かず飛ばず。6th の《Port Of Call》で Silje Nergaard として、また実質ジャズ・ヴォーカルに的を絞って再起したようだ。リサほどではないが「ロリ声」で一聴「癒し系」。が、歌のうまさの方に耳が行く。かわいいより、涼とした爽快感、色気、誠実な表現のバランスがよくとれている。
7th の《At First Light》は、どちらかというと、スウィング感の妙味よりは、翳りのあるややけだるい甘さが素敵だ。8th の《Nightwatch》では、7th ではまだ茫洋としていた彼女の世界がより鮮明になる。北欧ジャズというよりは、味わい深い「女の歌」になっているのがたまらなくいい。
ノルウェーというと、最近、寺島靖国さん宅で聴かせていただいたスールヴァイグ・シュレッタイェル(Solveig Slettahjell)も抜群の歌い手だし、Come Shine の紅一点リーヴェ・マリア・ロッゲン(Live Maria Roggen)もなかなかいい。ジャズではないが、カリ・ブレムネス様(Kari Bremnes)もまた素晴らしい。ノルウェーは、私には「女の歌」では端倪すべからざる国なのである。いい女の歌を聴くほど仕合わせな時間はない。

追伸:最初に挙げたリサ・エクダール(こちらはスウェーデン)もお薦め。



3.



Zig-Zag Territoires : ZZT 030401

J.S. Bach : Les Suites Anglaises BWV 806-811
( Zig-Zag Territoires : ZZT 030401 ; 2CDs )
  1. Bach : Les Suites Anglaises BWV 806-811
Blandine Rannou (cem)


Alpha : Alpha 014

J.S. Bach : Variations Goldberg
( Alpha : Alpha 014 ; 2CDs )
  1. Bach : Variations Goldberg BWV 988
  2. Bach : 14 canons sur les huit premieres notes de basse de l'Aria des Variations Goldberg (manuscrit de Strasbourg) BWV 1087
  3. Die Wasserrüben und der kohl (Volkslied, sopra la Bergamasca)
  4. Ich bin so lang nicht bei dir gewest (Kehraus improvisé)
Céline Frisch (cem)
Dominique Visse (c-tr : 4)
Ensemble Instrumental Café Zimmermann



久々にチェンバロを堪能できた 2 盤。石丸電気塔・新宿店にて。勉強不足で二人とも初聴きとなる。
まずは、ランヌーなるクラブサニストによる JSB の《英国風組曲》。味のあるレーベル Zig-Zag Territoires のリリースなのだから... と半信半疑も他の音盤と一緒に購入。ブランディーヌという名前から (註) ふた癖もあるような快(怪)演を期待したのだが、豈図らんや、実に魅力的だった。仏国人ならではのイネガル式濃い口のルバートやアルペジオの多用には苦笑するのみだが(第 2 番のプレリュードではほとんどパウゼに近いタメがあり、何度か窒息しそうになった)、とにかく響きの膨らみといい、音楽の抑揚といい、滴るような美麗さと素っ気なさの同居が蠱惑的ですらある。楽器についての詳細はないが、シデイ&バルによるリュッカース=エムシュのコピー。彼女には《仏国風組曲》とラモーの全集の録音もあるそうで、ラモーは期待できそうだ。

もう 1 枚がレオンハルト門下のセリーヌ・フリーシュによる BWV 988。アンタイの再録音新譜を買おうと思ったが、隣にあった本盤を購入。これもまた若々しい生気が音に漲りながら、実に爽快・瀟洒な演奏で魅力溢れるゴルトベルクである。力瘤が少しも聞こえず、恬淡とした中にもしっかりした表現力が根を張っている。セリーヌ嬢も楽器の扱いが見事で、明るく澄明な響きだ。こちらの楽器もシデイ&バルだが、ドイツ楽器のコピーとしか書かれていない。彼女は仏ハルモニア・ムンディに JSB 集を録音している由。
本盤は 75 年ストラスブールで発見された《14 のカノン》とドミニク・ヴィスが歌う第 30 変奏の〈クオドリベット〉のドイツ民謡をおまけに収録。なお、プロデューサの J.P.コンブがアンリ・カロル(Henry Carol)に本録音を捧げると書いているところが、また興味深い。


(註)
これはブランディーヌ・ヴェルレ様(Blandine Verlet)を指す。



2.



Opus111 : OPS 30-66

Alessandro Scarlatti : Lamentazioni per la Settimana Santa
( Opus111 : OPS 30-66 )

A. Scarlatti : Lamentazioni per la Settimana Santa
  1. Prima lettoine del Mercordi Sancto
  2. Seconda lettoine del Mercordi Sancto
  3. Lectio Prima Feria IVa Majoris Hebdomadae
  4. Lectio 2 Feria IVa in Parasceve
Noémi Rime, Martina Lins (sp)
Le Parlement de Musique
Martin Gester (cem, org & dir)


K617 : K617146

Couperin : Leçons de Ténèbres
( K617 : K617146 )
  1. Antienne : improvisation
  2. 1re Leçon pour le Mercredy Saint
  3. Répons : " Parfums d'Al Quds "
  4. 2me Leçon pour le Mercredy Saint
  5. Répons : Eikha : Lammentations de Jérémie
  6. 3me Leçon pour le Mercredy Saint
  7. Contra me (miserere) - Gérard Pesson
XVIII-21
Musique des Lumières

Cyrille Gerstenhaber, Stéphanie Révidat (sp)
Marco Horvat (brn, chant hébraïque)
Rachid Benebdeslam (c-tr, Chant musulman)
Nabil Khalidi (oud), Elena Andreyev (vc), Elisabeth Geiger (org)
Jean-Christophe Frisch (fl, dir)



『エレミアの哀歌』を 2 編。Berkshire Record Outlet塔・新宿店にて。
アレッサンドロ・スカルラッティの《聖週間のための(エレミアの)哀歌》を聴くのは初めて。彼がパレストリーナとも縁の深いローマのサンタ・マリア・マジョーレ教会の楽長を務めていた時に書かれた作品である。但し、木〜土曜日各 3 課ではなく、木曜日は第 1 課と第 3 課、金・土曜日が第 1 課と第 2 課で構成されている。
時に技巧たっぷりに舞うソプラノの美麗なメリスマとヴァイオリンとの魅惑的な絡みなど、アレッサンドロらしさも明快。だが、劇的な感興よりも、アレッサンドロの書法的厳格さの上に質実な風格が載る味わいが濃く、それが実に心地よい。今ひとつ脂っこさとメリハリがほしい気もするが、ジェステールとパルルマンの清潔で端正な演奏は好ましい。しかし、当盤は〈聖土曜日のためのレクツィオ〉が収録されていない抜萃盤なのが残念。どうせなら全部録音してほしかった。エンリコ・ガッティによる録音(Symphonia)が全曲盤のようである。

次は、大クープランの珠玉の逸品《ルソン・ド・テネブル》の変わり種。これを軸に、即興をアンティフォナに、イスラム・スーフィズム風〈Al Quds(イェルサレム)〉とヘブライ版〈エレミアの哀歌〉をレスポンソリウムに置き、ペッソンによる〈ミゼレレ〉で締める。以前、ブラハスパティやフセインらインド古典組とシャルパンティエの《ルソン》を纏めた好企画を出した K617 らしい続編。XVIII-21 は即興性を重んじる古楽系団体の由。
『エレミアの哀歌』は、カトリックのみならず「イェルサレム」という場の記憶を通じ、ユダヤ教やイスラム教との連関もあるわけだが、この録音は『エレミアの哀歌』のテクストの始源に迫らんとする意欲的な音楽的邂逅と言えようか。クープランの《ルソン》は、通常、オルガンはポジティフで弾かれることが多いが、ここでは美しいサン=キラン(Saint-Quirin)のジルバーマンの楽器を使っていることも嬉しい。ベナブデルスラムのテクストによる〈Parfums d'Al Quds(イェルサレムの芳香)〉を聴くと、私は何だかファイルーズ様の《Yaa Al-Quds(おお、イェルサレム)》の絶唱を思い出したりする。最後の〈ミゼレレ〉の漆黒もまた捨てがたい味わいであった。
それにしても、クープランのこの美しい《ルソン》が木曜日 (註) 以外、現存していないのは実に惜しい...


(註)
実際に書かれているのは水曜日である。仏国での《ルソン・ド・テネブル》では、水曜日、木曜日、金曜日と書かれているが、曜日が本来の聖週間の 3 日間(木〜土曜日)と異なるのは、フランスでは当時、真夜中を避け前日の夕方に礼拝が行われたためである。スカルラッティの方も、実際は水〜金曜日と書かれており、実態は同じと思われる。



1.



Cyprès : CYP1635

Joseph Jongen : Songs with orchestra
( Cyprès : CYP1635 )
  1. Deux mélodies op. 25
  2. Deux mélodies op. 45
  3. Cinq mélodies op. 57
  4. Triptyque pour orchestre op. 103
Mariette Kemmer (sp)
Orchestre Philharmonique de Monte-Carlo
Pierre Bartholomée (dir)



@塔にて。白国レーベル・シプレは、母国の偉大なる作曲家、ジョゼフ・ジョンゲン(1873 - 1953)の作品録音をリリースし続けている。当盤は管弦楽付き歌曲が 3 作と管弦楽のための《トリプティク(三部作)》が収録されている。管弦楽付き歌曲を聴いていると、まるでショーソンの世界に聴き紛うかのようだ。隈取りの濃さよりも淡い陰翳が水面に漂う後期ロマンの漣は、オルガンにおけるジョンゲンの持つ本性とは随分違うような気がする。しかし、室内楽で聴かせる端正で彫りの深い音楽性のほうは、時々笑みを湛えながら、顔を出している。録音のせいか、管弦楽の奥行きが聊か魅力に弱いのは惜しい。掴みきっても掌の中には何も残っていないような、そんな淡く折り目正しいジョンゲンがもう少しあれば、と思ったりした。



変に眇で書くのはやめ、備忘録に少々芽が出た程度のものに留め置く、本来の買物記であればよかったのである。人間、出過ぎた背伸びばかりやっていても、誰もその魂のことを見向きはしない。たまに自分の生存を主張したくなったら、ここに出張ってきて何やら綴ることとして、「ルサンチマン」addenda として追加することにした。

於霜月 月齢参点弐
浮月山人 久闊ヲ叙ス





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