Wagakokoro no Ressentiment / 2002. 02


5.



EMI : 5 74866 2

管風琴音盤百選推薦盤
Orgues & organistes français du XXè siècle (1900-1950)
( EMI : 5 74866 2 ; 5 CDs )
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当箱バーゲン中だった石丸電気 3 号店にて。
当サイトでも風琴セクションで紹介している「Orgues & organistes français en 1930」(5 LPs)は長らく廃盤。しかし今年はじめ、往年の著名風琴奏者たちが幾人か増補されての CD 化と相成り、目出度く再発された。但し、細かく内容を閲するに、風琴奏者の録音が数名加わったのみならず、CD 化に当たり、内容も多少の変更が施されている。詳細は各々のデータ頁をご参照願いたいが、ここではその梗概を纏めておこう。



私的に大きな意義ある進歩として、録音データが細かく追跡され、LP 時と比べるとかなり多くのデータが修正されていることを挙げたい。例えば、ジグーのように日時不明だった録音も、今回の CD では明記された。また旧 LP 箱同様、原盤の matrix 番号も記載されている。

次は加わった音源(演奏者)に関して。ここでは特記すべきものだけ筆を攬るが、どちらかといえば、コレクターズ・アイテム的な録音が収録されたように思える。
まずは、パリ・ノートルダム寺院のコシュローの前任者、サン=マルタンの SP 音源がサン=マルタン愛好家協会(Association des amis de Léonce de Saint-Martin)の手で板起こしされ、SP 以来、初出となった。
また、確証を得ていないが、デュリュフレも SP 以来初出と思われる音源である。特に「アランの名による...」は奥方のマリー=マドレーヌが得意にしていた所為か、御当人の録音がないと思っていただけに吃驚
その点、メシアンが半端。当箱では「L'Ascension」からの 2 曲となっているが、実はこの曲は全部が既に CD 化されている。ヴィドール、デュプレ、ヴィエルヌの当箱にある音源と併せて 1 枚になっているので、ラサンション全編を聴きたい方には、そちらもお薦めする(註 4)。

最後は削除音源について。単に新たな音源が加わったのみならず、録音数の多いデュプレとマルシャルは、LP 時に収められていた音源が幾つか除かれ、別の音源に代替されている。デュプレに関しては、彼の自作自演を減らし、フランクの「前奏曲、フーガと変奏」など数曲が新たに追加された。マルシャルは、35 年録音の JSB の BWV 564 などが加わった。削除された音源は、特段、名残り惜しさのない程度のものと思う。



このように、結果的には LP 音源の CD 化が主力ながら、CD らしくリバイズされてのリリースとなった。しかし、5 枚組になぜ拘泥したのかという疑問がある。新規音源の足し込みが、却って全体の構成や配分を中途半端にしてしまったのなら、余計な削除をせず、7 - 8 枚のセットに拡張すべきだったのではなかろうか?
であれば、(マルシャルと重複するが)トゥルヌミールのフランクのコラール 3 番も入れてほしいし、JSB など古典の録音は可及的少な目にし、即興か自作自演を主に聴ける人に絞ってもよいと思う。特にラングレやリテーズには、即興演奏か自作自演を願いたいところである。また、コシュローをねじ込めるなら、私的にはドゥメシュの怪演を是非とも入れたく... とまぁ、欲を出せばきりがなくなる。




4.



K617 : 068

Gaston Litaize : Missa Solemnior
( K617 : 068 )
  1. Prélude liturgique XI
  2. Pièce en trio
  3. Prélude liturgique IX
  4. Missa Solemnior (Kyrie - Gloria - Sanctus - Agnus Dei)
  5. Offerte vobis Pacem
  6. Epiphanie
  7. Reges Tharsis
  8. Sonate à deux
Eric Lebrun, Marie-Ange Leurent (org)
Ensemble Vocal des Vosges
Sebastian Durand (dir)




相変わらず、風琴ものが続く。今年はできればカルク=エレルトをじっくり辿りたいが、ジャン・ラングレ(1902 - 1991)の勉強も迫ってきている。ラングレは、トゥルヌミールとの関連も濃厚なので楽しみだが、そんな中で、偶々バークシャから拾ったのは、ラングレと同期の人、ガストン・リテーズ(1909 - 1991)だった。

古典演奏の方が著名なリテーズも LP 時代、 MOTETTE から Kempen での自作自演と即興の録音が 2 枚出ていた(註 3)。だが、その頃の関心が古典にあったため、買わずじまい。今思えば、どんな即興をしたのかを知る縁(よすが)となるため、惜しいことをした。作曲をする風琴奏者は、必ず即興があれば併せて聴いてみないと、実像が判断し難いことが最近よくわかったからである。

リテーズの opus の全体像は知らないが、「作曲家」リテーズとしては、特別、面白い作品が遺されているわけではないだろうし、ここに収録された作品も「荘厳ミサ」を除けば、風琴小品ばかりだ。音楽的にはやや形式主義にかたぶき、感興には弱い。
このミニマムな古典的小宇宙は、音楽内容とも或る意味で紐帯している。新古典的(或いは擬古典かも)な宗教作品主体の印象を受ける。大林師匠に「仏風ペピングみたいですよ」と電箋でお伝えしたところ、当たらずも遠からずの旨、御返辞拝受。NAXOS のフランスもので活躍するエリック・ルブランの小気味よい演奏。




3.



ASTREE : E 8504

Maskes & Fantazies
( ASTRÉE : E 8504 )
  1. J. Coperario : Suite en Do majeur nš 9
  2. M. Locke : Suite en la majeur nš 6
  3. J. Coperario : Suite en ré mineur nš 12

  4. and others ...
    Anonyme, R.Johnson, T.Tomkins, J.Adson, W.Lawes, J.J.van Eyck
Sébastien Marq (flûte-à-bec)
Le Concert Français


ASTREE : E 8561

Telemann : Solo, Trio & Concerto
( ASTRÉE : E 8504 )
  1. Concerto en la minuer [recorder, ob, vn & b.c.]
  2. Sonate en trio en la minuer [recorder, vn & b.c.]
  3. Sonate en trio en do minuer [recorder, ob & b.c.]
  4. Solo en do majuer [cembalo solo]
  5. Sonate en trio en sol minuer [ob, vn & b.c.]
  6. Sonate en ré majuer [vc & cem]
  7. Sonate en trio en ré minuer [recorder, vn & bc.]
Ensemble Fitzwilliam




この 2 盤と上のリテーズ作品集は Berkshire Outlet での拾いもの。
以前、マルクとアンタイ率いるコンセール・フランセとのテレマンを挙げたことがあった。(註 2) 実に躍動感と愉悦に満ちた演奏で、今でもたまに試聴用に持ち出している。その後、特に両者のリリースを追っていなかったが、この英国の小品を蒐めた「マスクとファンタジー」を発見。こうした曲趣だけに、テレマンのような持ち味は少々薄いが、それでもやはり楽しい。マルクの笛は、本当にこのアンタイらのバックとよく和合する。

次がテレマン。テレマンの作品の中でも、トリオ・ソナタを軸に編成が可変で、短調の作品を集めた録音。これも楽しめた 1 枚。テレマンのこうした作品は、素人が家庭で演奏できる作品が多いものの、それだけに聴かせどころがうまくないと魅力が出てこない。アンサンブル・フィッツウィリアムを聴くのは初めてだが、アンタイらのような溌剌さよりは幾分奥床しいが、ムラなく心地よいパッションを醸し出して呉れる。




2.



SOLSTICE : SOCD 192

管風琴音盤百選推薦盤
L'orgue contemporain à Notre-Dame de Paris
( SOLSTICE : SOCD 192 )
  1. Xenakis : GMEEOORH
  2. Chaynes : DIAGRAMME
  3. Haroun Tazieff présente Etna 71
  4. Chapelet : Etna 71
  5. Haroun Tazieff présente Evocations du Niragongo
  6. Chapelet : Evocations improvisées de l'éruption du volcan Niragongo
Françoise Rieunier (org - 1, 2)
Francis Chapelet (org - 4, 6)


SOLSTICE : SOCD 173

Henri Carol : Œuvres pour orgue
( SOLSTICE : SOCD 173 )
  1. Huit miniatures pour le temps de l'avent
  2. Variations sur " Creator alme siderum "
  3. Sur un Noël provençal
  4. Noël d'Auvergne avec 8 brèves variations
  5. " Nouvelles, nouvelles... " Variations et Postlude
  6. " Sur un Noel vellave " 8 Variations
  7. Differences sur le chant du " Vexilla Regis "
  8. Priere à Notre-Dame de Misericorde
Gabriel Marghieri (org : Cathédrale de Monaco)




2 盤とも大林商会の頒布会にて購入。前者は既に「管風琴音盤百選」エントリの名誉に浴した。

まず「現代的風琴音楽於巴里聖母大寺院」から。録音はクセナキスが 80 年、それ以外は 70 年代前半。何ゆえに今頃になってのリリースなのだろう... 抑も 60-70 年代の HMF 時代、古典で鳴らしたシャプレによるクセナキスという意外性に興発されたのだが、届いてよく見ると、演奏者はシャプレに非ず、リュニエであった
勿論、クセナキスの「GMEEOORH」がお目当てだったのだが、聴いてみると、シェーヌとともに、クラスタの威力や様々な音響のモザイクは楽しめたものの、パイプオルガンで演奏されるべき本質を持った作品とは思えなかった。妄言との譏りを懼れず言うなら、これでは電子音で十分ぢゃないか、と。
この盤で本当に面白いのは、むしろシャプレの即興だった。火山愛好家の風琴奏者というのも恐れ入るが、火山活動からインスピレーションを得て、音響的擬態を創り出す想像力、何よりオルガンの音響に転身させる鋭敏な感覚とその処置の的確さは、呆れるほど卓れている。かなり古い録音であるにも拘わらず、逆に新鮮な息吹を聴き手の耳に吹き込んで呉れたのだった。

現代において、パイプオルガンという楽器・音響に本質的に組み合うオルガン作品が、「非」風琴奏者の手から産み出されることが意外なほど少ないのは、オルガンの音響機能性にばかり意識を複雑に注ぎ込み過ぎ、音響象徴性の側面を看過しているからではないかと思うことがある。
一度、シェルシ(Giacinto Scelsi)の「Un Adieu」を聴いてみるといい(註 1)。痴呆的とすらいえるほど簡素だが静謐な甘美さの中に、オルガンの本質がちゃんとあるのだ...

次は、マルギエリによるアンリ・カロル集。パリ、サクレ=クールの風琴奏者マルギエリは、1 月 6 日に武蔵野市民文化会館(悪口はソース参照)にて来演した。演奏会自体は、美味なる献立、並のお味だった由...

彼の師であるモナコの司祭で、風琴奏者、教会音楽のスペシャリスト?でもあったのが、カロルである。実のところ、名も作品も、接するのは今回が初めて。簡単明瞭に特徴づけると、これらは「現代のノエル」である。どれも皆、南仏の宗教音楽に通底する明るい色調を持つミニアチュア的な汎調性音楽で、聴きやすさもさることながら、その風情の佳さは評価したい。ダカンやバルバストルやミシェル・コレットの世界が、もっと陽光に浴し、現代に転生してきたかの気分だが、私には彼等古い時代のノエルよりずっと心地よく耳に響く音楽である。しかし、マルギエリという風琴奏者の実力が窺えるような音楽ではないが...




1.



Wergo/Schott : ORG 7102-2

Naji Hakim plays Naji Hakim
( Wergo/Schott : ORG 7102-2 )
  1. The Last Judgment
  2. Chant de Joie
  3. Sinfonia in Honore Sancti Ioannis Baptistae
  4. Bagatelle
  5. Improvisation
Naji Hakim (org : St-Trinité, Paris)




ナジ・ハキムが初めて日本の聴衆の前に現れたのは、2 月17日(日)の午後、首都から遠く離れた宮城県白石市 CUBE であった。自作を両端におき、20世紀フランスのオルガン音楽史上、重要な作曲家の面々を挟み込むプログラム。オルガンというと JSB の名前しか結びつかない程度の日本人の感覚からすれば、或る意味では過激なプログラムである。

弾き急ぎ気味のところはあったが、素晴らしいコンサートだった。混濁なく明度の高い、広い色彩世界に抜群のバーチュオジティが加わる。この人の音には、凡そ「闇」や「深淵」なるものが存在しないかのようだ。私的には、しかし、ハキムという人は、本性的に organist = interpreter という位置からは離れたところにいると感じられた。音楽解釈として、トゥルヌミールやフランクはそれほど面白くなかったし、最後の即興もソツなくこなしたという感じであって、音楽的に強靱な渦を創り出し、聴衆を巻き込むというノリとは違うのである。
結果的に彼の自作自演(しかもかなり楽譜を逸脱していたそうだが)が最も面白かったところ、彼は本質的に、かつてオルガン音楽が持っていた organist = composer = improvisator であって、コンサート・オルガニストとしての期待を聴き手が寄せるのは、筋違いなのだろう。そして、そういう彼こそ、その三位一体のフランスオルガン音楽史の偉大な流れに棹差す、現在の大きな嶺のひとつなのである。

この CD は予習用に Amazon.de より購った。当日演奏された「The Last Judgment」も入っているが、やはり当日演奏された「Le Bien-Aime(愛しい人)」やアンコールの「Lebanon Overture」なども録音予定に入っていると聞く。楽しみである。




1 月から 3 月半ばまでの間というもの、読書と酒に没入し、まるで生活感がなかった。他人から見れば、ただの自棄的な飲んだくれに過ぎなかったろうが、自分にはまだ何やらわからぬが、大きな前進が漸く胎動し始めた萌芽と感じていた。案の定、4 月からは気分も軽くなり、急激に好転している。(2002.04.06 記)




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