Wagakokoro no Ressentiment / 2000. 08 : ジャン・ギユー小特集


2.


FESTIVO : FECD 123
Liszt by Jean Guillou
( FESTIVO : FECD 123 )
  1. Symphonic Poem " Prometheus "
  2. Prelude and Fugue on B.A.C.H. ( syncretic version )
  3. Symphonic Poem " Orpheus "
  4. Fantasia and Fugue " Ad nos, ad salutarem undam "
Jean Guillou (org)
( Notre Dame des Neiges, Alpe d'Huez ; St. Laurenskerk, Rotterdam -4- )


Unda Maris : UMCD 9704/05
The art of organ building : 1967-97 Van den Heuvel-Orgelbouw bv
( Unda Maris : UMCD 9704/05 )
  1. Bach : Pièce d'Orgue BWV 572
  2. Bach : Concerto in G-dur nach Herzog J. Ernst BWV 592
  3. Mendelssohn : Sonate Nr.4 in B-dur op. 65
  4. Guilmant : Morceau de Concert op. 24
  5. Oosten : Improvisation Psalm 150
  6. Vierne : Pastorale from " 24 Pièces en stylelibre " op.31-20
  7. Franck : Grand Choeur en mi-bémol majeur
  8. Liszt : Fantasia and Fugue " Ad nos, ad salutarem undam "
  9. Rogg : Arcature
  10. Hakim : Pange lingua
  11. Schumann : Nr.4 from " 6 Fugen über den Namen B.A.C.H. " op. 60-4
  12. Schumann : Nr.4, 5 from " 6 Studien für Pedalflügel " op. 56-4/5
  13. Gárdonyi : Grand Choeur
Jean Guillou (org : St-Eustache, Paris)
Ben van Oosten, Dirk S. Donker, Lionel Rogg, Naji Hakim
Torvald Torén, Karl Maureen


DORIAN : DOR-90101
The Art of Improvisation
( DORIAN : DOR-90101 )
  1. Jubile *
  2. Pastourelle **
  3. Saturnale **
  4. Pantomime : à Pulcinella ***
  5. Paraphrase pour Don Giovanni ****
  6. Incantation ***
  7. Primum Mobile *
  8. Élégie pour Daphnis ***
  9. Anacrouses **
  10. Anamorphoses *
  11. Rituel pour Stravinsky **
  12. Märchen *
  13. Litanie *
Jean Guillou (org)
( * = St-Eustache, Paris )
( ** = Tonhalle, Zurich )
( *** = Notre Dame des Neiges, Alpe d'Huez )
( **** = Trinity Church, New York )




Philips の 8 枚を聴いた後、Festivo のリスト集を聴いてみる。「Ad nos ...」以外、クロイカーの小振りの楽器のためか、全体よく纏まっているものの、凄惨な息吹に欠ける。特に交響詩 2 作のトランスクリプションは、どうしてもダイナミクスの跳躍が弱く、フレージングでのリズム感も宜敷くない。
お目当ての「B.A.C.H.」。リストの原作は全部で 3 版存在する。原曲のオルガン作品は 1855 年の作曲だが、通常は、リスト自身が1870年に改訂した版で演奏される(聴いてはいないが、トマス・トロッターが両版共に録音している由)。更に 1871 年にピアノ版が発表された。このピアノ版とオルガン版に基づいて(勝手に)編曲したものが、ギユーの syncretic version なのである。確かにオルガン版では、超絶な技巧は思った以上にない分、ギユー程の人には飽き足らないのだろうが、この曲が本来持つ音楽の豊かさは薄まってしまう。ピアノ版が、徒にトリルやオクターブ跳躍の嵐になり、音楽の流れがまるで霧中になっているように、技巧的には面白いけれど、結局、オルガン版の良さだけを拾い聴きしてしまうだけだった。Dorian にもこの曲が録音されており、そちらの方がお薦めらしいので、それはいずれ。

下の 2 枚獲得には、大林師匠にお世話になった。多謝。ひとつはオランダの国際的オルガン・ビルダーである Heuvel 兄弟の楽器を紹介した広報的 CD である。興味のある方は、大林さんにお尋ね頂きたい。
この中に、ギユーによるリスト「Ad nos ...」が収録されている。上記、Festivo 盤と聴き比べてみた。圧倒的に St-Eustache の録音の方が面白い。面白さの観点は、オルケストレーションのような響きの遠近、効果的音色対比に耳を奪われるところだ。楽器の芳醇・豊麗な音色性をかなり前面に出した演奏で、その絢爛な色彩感はお見事としか言いようがない。反面、Festivo ともども、演奏の求心力はあまり強くなく、フーガ以降もまったりし過ぎて追い込みに弱い。

最後は「The Art of Improvisation」。レーベルの企画ではなく、ギユー本人が四ヶ所で行った即興演奏から自身厳選したものである。最近 Philips からリリイスされている一連の新録音(自作や即興主体)も、ギユー本人の持ち込みとのことである。
それはともかく、この即興は全く素晴らしい。彼の感性が、オルガニストとしては、特絶したものであることが、この即興集でよく理解できる。非常に鋭利で瞬発力の高い 1 曲目などの持ち味といい、「Don Giovanniのパラフレーズ」など、テーマを事前提示された時の彼の即興によくある、主題の循環的崩壊と音響イメージの複雑な位相など、彼のハイテック=ハイタッチの勝利だろう。86 年の NHK ホールでのライブ( Editions Arcturus 盤)における、ダブル主題(キラキラ星と椰子の実)の即興と感触は同じだ。



1.



PHILIPS : 446 644-2
Guillou : Improvisations I
( PHILIPS : 446 644-2 )
  1. Jeux d'orgue
    ( Improvisations sur des thème choisis par les auditeurs de France-Inter, France-Musique et France-Culture )
  2. Visions Cosmiques
    ( Improvisations dédiées à l'équipage d'Apollo 8 )
Jean Guillou (org : St-Eustache, Paris)


PHILIPS : 446 645-2
L'Orgue du XXe siècle
( PHILIPS : 446 645-2 )
  1. Jolivet : Mandala
  2. Bacewitz : Esquisse
  3. Tisne : Luminescences
  4. Philippot : Sonate
  5. Messiaen : " Combat de la Mort et de la Vie" from " Les Corps Glorieux "
  6. Guillou : Sinfonietta
Jean Guillou (org)
( St-Eustache, Paris ; Matthias Kirche, Berlin -6,7- )


PHILIPS : 446 651-2
Haydn - C.P.E.Bach : Concertos pour orgue
( PHILIPS : 446 651-2 )
  1. Haydn : Concerto pour orgue en ut majeur n° 1 Hob. XVIII/1
  2. Haydn : Concerto pour orgue en ut majeur n° 2 Hob. XVIII/8
  3. Haydn : Concerto pour orgue en fa majeur n° 4
  4. C.P.E.Bach : Concertos pour orgue en mi-bémol majeur
Jean Guillou (org)
( Haydn : Großmünster, Zurich)
Orchestre du Musikkollegium de Winterthur
René Klopfenstein (dir)

( C.P.E.Bach : Lutherkirche, Berlin )
Orchestre Brandenbourgeois de Berlin
René Klopfenstein (dir)

PHILIPS : 446 652-2
Toccatas Célèbres
( PHILIPS : 446 652-2 )
  1. Bach : Toccata en fa majeur BWV 540
  2. Frescobaldi : Toccata pour l'élévation
  3. Bach : Toccata et fugue en ré mineur BWV 565
  4. Buxtehude : Toccata en fa majeur
  5. Bach : Toccata, adagio et fugue en ut majeur BWV 564
  6. Seixas : Toccata en sol mineur
  7. Widor : Toccata de la 5e Symphonie pour orgue op. 22
  8. Guillou : Toccata
  9. Prokofiev : Toccata op. 11
Jean Guillou (org)
( Großmünster, Zurich -3,5- ; Matthias Kirche, Berlin )


PHILIPS : 446 654-2
Guillou : Improvisations II - Sinfonietta
( PHILIPS : 446 654-2 )
  1. Improvisations sur des Noëls traditionnels
  2. Improvisations sur un thème de Purcell
  3. Guillou : Sinfonietta
Jean Guillou (org : St-Eustache, Paris ; Matthias Kirche, Berlin -7- )




私自身、ギユーは余り好きなオルガニストではなかった。
第一、即興の録音を聴いたことがなかった。作品演奏の録音でも、自作曲を除くと、特異なアゴーギクやテンポなどは面白いが、音楽の構成力や造形力の点では感じるものなく、只管に音楽の形式的な進行へ反逆しているようにしか思えなかった。他方、レジストレーション技能には瞠目するものが多い。が、瞬間瞬間の(風変わりな!)音色感だけで成り立つ奇妙さが、逆に聴き手を飽きさせるように思えていた。美味しいと言えば美味しい部分もあるが、豊かな内容を聴いているという感触が殆どなかったのである。

その思いが今になって変化を遂げたというのではない。契機は 7 月に 3 盤挙げた、仏 Philips の「Collection Grandes Orgues」であり、残り 5 枚のギユー録音を手に入れ、自分が避けてきたものと対峙して、初めて理解に至ったということなのである。私自身が今迄聴いてきた一部的なギユーでは、彼の面白さは殆ど理解できることがない、ということを改めて気づかされた訳である。


この仏 Philips のシリーズは、ギユー自作の「Sinfonietta」の同じ録音が、2 枚で重複しているのは残念としても、この 8 枚で、 LP 期のリリースが揃ってくれた。通して聴いた上で改めて感じたのは、ギユーの面白さは、オルガンという楽器の表現力を創造的に開示し、そこから演奏の在り方を照射していることだ。彼の「怪物」的技量が、この複雑な楽器構造に完璧に精通した判断と認識とに源泉を持つことをすぐに理解できよう。その点だけでも、現在、ギユーを凌駕する者は存在しない。

こうした彼の能力が最大限に発揮されるのは、まずはトランスクリプションか即興、次いでコンテンポラリであろう。逆に古典や通俗作品では、人口に膾炙した演奏フォルムの逆転的崩しを行う。このシニカルさは、彼の深い知性と教養から溢出するのであろう。だが痛快ではあっても、後々まで印象に残る演奏とは思えぬ。バッハについては、稍々皮相な解釈と言えなくもないが、コシュローやドゥメシュ等と較べても、60−70年代における仏国のバッハ解釈のパラダイムから、そう大きく乖離していない。

とにかく無類に面白いのは、やはり即興の 2 枚である。ギユーの即興は、乗りに乗ったコシュローのような、或る種「狂的」に厳烈な推進性よりも、ずっと理に勝るものに思える。通例、過去演奏の範型を瞬発的に組合わせてゆくことの多い即興も、ギユーの場合、通時的な推進の複雑さよりも、音型の循環的崩壊と音響イメージの遠近や多元性に面白さがある。即興に於ける彼のイマジネーションは、過去の音楽作品の断片の想起とは無縁である。だが頓知も皮肉もある。まるで禅問答のようだ。
またそれらは、主題音型の時間的肉化ではなく、音型を崩壊しつつ循環させながら、音のイメエジを変幻自在に肉化する方向にある。「目眩まし」的大道芸と前衛詩とを止揚したような感覚かもしれない。なお、vol. 1 の 2 曲目は、Vision Cosmique と題されたアポロ 8 号の宇宙飛行士に捧げられた即興だそうである。

次いで面白いのは、「20 世紀のオルガン音楽」か。感心できる作品はあまりないが、軽い質感であざといメシアンは悪くない。自作「シンフォニエッタ」も面白い。「トッカータ集」でのバッハやバロックものは、彼の技量を測る物差しにはならないし、また決して面白いものではないだろうが、ギユー編曲のプロコフイエフのトッカータは、原曲のピアノよりあざとく楽しめる一品。「ハイドンとエマヌエル・バッハ」の協奏曲集も、先のアーンとエマヌエル・バッハ同様、フレージングの面白さと音の愉悦が素晴らしい。

とにかく、この Philips 8 枚は、廉価盤でもあるし、ギユーの概要を知るには最適の買物といえるだろう。





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